裁判員裁判で現住建造物等放火罪について無罪とし、窃盗と住居侵入の罪だけで懲役1年6カ月(求刑懲役7年)とした東京地裁判決に対する控訴審で、東京高裁(飯田喜信裁判長)は29日、一審判決を破棄し、東京地裁に審理を差し戻す判決を言い渡した。弁護側は上告する方針。最高検によると、一審が裁判員裁判の判決を高裁が破棄、差し戻したのは全国で初めて。 審理が差し戻されたのは、無職・岡本一義被告(40)。2009年9月に東京都葛飾区のアパートの一室に侵入し、現金千円を盗んだうえ、ストーブ内の灯油をまいて火をつけた、などとして起訴された。被告は放火を否認し、一審判決は「放火の犯人である可能性はかなり高いが、犯人とするには合理的な疑問が残る」と判断した。 高裁では、検察側が証拠請求した被告の前科の扱いが争点となった。被告が犯人かどうかを立証する場合、手口などに特徴のある前科を裁判の証拠として調べることがある