IT投資に極めてシビアな判断する大手金融機関の経営者がいる。業務改革担当役員だった時、CIO(最高情報責任者)が推進していた100億円単位の大規模システム構築プロジェクトを、「カネの無駄遣い」と徹底批判して木っ端微塵にした“戦歴”を持つ人だ。経営トップになった今も、IT部門が上げてくるシステム化計画案を片っ端からリジェクトする。少し前に取材する機会があったので、その理由を聞いてみた。 「だって、それで人が減るわけじゃないからね。IT部門はいろいろと数字を作って、業務改革につながると言うが、私から言わせると全部ウソ」。返ってきた答えを聞いて、私は感心してしまった。日本企業のこれまでのIT投資の誤謬を、見事に言い当てているからだ。この経営者がリジェクトするのは、売り上げを作るためのITではなく、効率化のためのITの案件だ。実際、ほとんどの日本企業では、IT投資による効率化は全くできていないに等