赤坂真理の出世作『ヴァイブレータ』を読んだ。 解説の高橋は「意思だけが、私を動かす」(本文)この作品を-その小説の外側に広がる世界、その小説を産みだしたこの世界の歴史についての、痛切な回想ではないか-と述べている。 小説の中で現在進行している時刻が、それ程に速く、それを書いている当の作家の実作業も多分とても速い筈である。それがとても壮快だった。そのことは、作家のあとがきでも述べられている。 -(編集者によると)この作品はほんとがんばって36回書きなおした-と作家自身が言ったことになっている、という。 つまり、「キーボードを打つ前に画面に字が連なっている」という体験を私は知っており、それらデータの集積をプリント・アウトし、物体化し、書きなおすことは、多分この作 家の常套手段ではないかと私は想像する。 私たちの日常でいえば、それって普通といわれるかも知れないが、そのデータの量が度外れている。