柔軟剤や制汗剤の芳しい香りが、ある日を境に頭痛や吐き気の原因に―。そんな化学物質過敏症の一種、「香害(こうがい)」に苦しむ人が増えている。新型コロナウイルス下で定着した消毒液のにおいでも症状が出るといい、事態は深刻だ。中には仕事を辞めたり、職場に被害を訴えたことでハラスメントに直面したりするケースもある。関西のクリニックでは10月、香害を専門とする外来が開設された。被害の全容は把握できておらず、担当する医師は「誰もが発症する可能性を持っている。社会の理解を広げることが重要だ」と意義を強調する。 長男も発症2年前の朝だった。関西地方に住む40代の女性は長男(8)を送り出すため、幼稚園バスの集合場所に向かった。いつもの光景だったが、異変は突如として起きた。 鼻を突くような柔軟剤のにおい―。その瞬間、激しい頭痛に襲われた。何とか帰宅したが、体調は3日間も戻らなかった。 「更年期かな」。そう考えた