国際金融規制界の最近のキーワードの一つに「オペレーショナル・レジリエンス」がある。バーゼル銀行監督委員会や各国当局が次々にガイダンスを出している。日本では略してオペ・レジと呼んだりしているが、レジリエンス、という英語はなかなか日本語になりにくい。 訳せば復元力とか、弾力性とか、強靭性あたりだろうか。イメージとしては、地震が来てもビクともしない前提の「剛構造」では低層建築しか建てられないので、揺れながら衝撃を吸収する「柔構造」で高層ビルを建てる、という時の柔構造に近い。 故障をしないコンピューター、バグのないプログラム、サイバー攻撃から自由なインターネット上の場所というものがない以上、障害のリスクをゼロにしようとする「ゼロ許容度」戦略では、どこかに無理が出たり、虚構が紛れ込んだりしがちだ。 米国のFRB・OCC・FDICは、昨年10月の連名のガイダンスで、「障害はなくせないが、柔軟なオペレー
■要旨 決済システムの将来像を考える際に、ブロックチェーン技術の活用の有無といった技術論から中央銀行マネーの在り方を考えるのは適切ではない。伝統的なプレイヤーである銀行以外に、ノンバンク決済事業者がリテール決済サービス市場に新規参入するなど、決済システムの構造が大きくかわりつつある中で、中銀マネーにはいったいどのような役割が求められるのか、民間マネーとの違いは何か、という本質論を抜いたままでは、決済システムの将来像に関する議論が迷走してしまう。中央銀行デジタル通貨の検討を進める際には、デジタル社会における中銀マネーと民間マネーの交換可能性(convertibility)をどう確保していくか、という点を軸に理解を深めていくことが重要となる。 ■目次 1――はじめに 2――CBDCとは何か 3――中銀マネーの役割 1│マネーの等価交換と一様性 2│危機時における中銀マネーの役割 4――CBDC
日本の人口をマクロでみると、出生率上昇が少子化=子どもの数の減少対策となる(本稿では海外からの移民人口増加策は考えない)。では、地方創生が叫ばれる各地の少子化(子ども数減少)対策、すなわちエリア別のミクロ少子化対策においても、出生率上昇がKGI(重要目標達成指標)またはKPI(重要業績評価指標)だろうか。実はそうではない。同一目標(出生数増加)に対するマクロ(日本全体)の政策とミクロ(各地方)の政策は必ずしも一致しない。本稿は、地方の少子化対策議論で非常に多くみられる「出生率上昇が、エリア少子化対策の最終指標である」に対し、必ずしも(大半のエリアで)そうではないことを示したい。 各エリアが達成したいのは、「自らのエリアで生まれる子ども数の増加」であることは異論がないだろう。では、最終目標のエリア出生数の増減は、何によって決まるのだろうか。エリア出生数は次式で計算される。 A<エリアの母親候
ある人事の実務家は部下に対して、従業員の労働条件を変更する際には、最大限の熟慮と覚悟をもって事に当たれと繰り返し説いていた。特に労働条件の切り下げは、対象となる人の人生のみならず、家族の生活にも大きな影響を及ぼす。また、一度下した決定はその後の従業員の働きぶりや人事管理に、中長期的に影響を与え続けることになる。そういう重い決定を、生半可な考えや覚悟で行ってはならないという戒めの気持ちを、彼は部下たちにしっかりと伝えたかったのだろう。 政府は5月13日に、国家公務員の俸給・ボーナスの1割カットを主要労働組合に打診した。5月14日の日経新聞の記事によると、政府は「(1)民主党の公約である『国家公務員総人件費の2割削減』、(2)国家財政の逼迫、(3)東日本大震災への対応」を理由としてあげている。 この動きに違和感を覚えるのは筆者だけだろうか。例年、国家公務員の給与は、民間企業の賃金水準の調査に基
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