南相馬市小高区にゆかりの作家、埴谷(はにや)雄高(ゆたか)と島尾敏雄の自筆原稿などを集めた同市営「埴谷島尾記念文学資料館」が、東京電力福島第一原発事故で警戒区域になり、資料館内の約1万点の資料が放置されたままになっている。空調の停止で温度や湿度の管理が行われず資料の劣化が心配され、市は早期の持ち出しに向けて準備を進める。 未完の大作「死霊」で知られる埴谷は、父親が旧小高町(現・南相馬市小高区)出身。代表作「死の棘」などを残した島尾も、両親が旧小高町出身だった。町の合併前、同町は2人の資料収集に努め、埴谷が新聞のコラム用に書いた原稿や、島尾の初期の作品「暖かい冬の夜に」の自筆原稿、手紙、蔵書など計約1万点を展示・保管する資料館を2000年5月に開いた。 展示資料はガラスケースに収め、未公開資料は収蔵庫に入れて保管している。両設備とも震災前は、主に紙の長期保存に適しているとされる湿度50%、温