嗜好品には、体をつくる栄養があるわけではない。 生命維持に必要不可欠ではないのにもかかわらず、全世界で嗜好品はたしなまれている。 嗜好品は、人間らしく生きるためには、なくてはならないものかもしれない。 嗜好品を考えることは、人間が生きるためになにが必要なのか、ひいては「人間という生き物とは何か」に迫ることでもある。 現代における私たちの嗜好品や嗜好体験を探究するために、文化人類学や歴史学者など様々な一線の研究者に話を聞く、新連載「生きることと嗜好」。 初回は京都大学人文科学研究所准教授の藤原辰史さんのもとへ向かった。 かつてナチス・ドイツは、国家に貢献できる人間をつくりだすべく、食生活のキャンペーンや禁煙運動などの「健康政策」を通じて、国民の日常に介入した。 その恐ろしさを著書『ナチスのキッチン』で指摘した歴史学者で、農業史と環境史が専門の藤原辰史さん(京都大人文科学研究所・准教授)はこう
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