●二枚舌ならぬ二枚腰でいこう 玄侑宗久さん(三春町) 復興のたたき台を提言した芥川賞作家 福島とフクシマ。言葉は繊細な方がいいと思っているので、原稿では書き分けています。 例えば、県全体が汚染地域だ、という大ざっぱな語られ方があります。そういう考え方についてはフクシマと書く。漢字では書きたくありません。 ひらがなだと湿りすぎで、カタカナだと突き放したイメージになる。こうした書き分けは日本語独特のものでしょう。フクシマという表現は今後も残っていくのではないでしょうか。 今、執筆中の仮設住宅を舞台にした短編小説では、カセツという表現を使ってます。仮設住宅に住む人がよく「ちょっとカセツに戻るね」とか言いますね。そのせいか、自然とカセツと書いていました。 カセツって、別の星の名前かと思うくらい、隔絶された場所です。「収容所じゃないの?」という人もいるほど。住み続けるには厳しい場所です。