かつて私は、「倭僑のススメ」と題して講演会まわりをしていたことがある。中国生活がやや長くなってきたころからだ。話す内容は、おおよそこんなものだった。 <中国人は長い戦乱が続いた歴史の中で、「地縁・血縁・金」しか信じなくなった。だから、自分の国が住みにくいと思ったら、国境を越えて新天地を目指す。その新天地で、その国の言葉や文化を学び、「華僑」となる。陸路で国境を越えられる中国と違って、四方を海で囲まれた日本ではなかなかそれをしない。「この国は自分にとって住みにくいのかも……」と思っても、我慢して「合わせる」しかないと思っているのではないか。> 実際に私は日本の芸能界、例えば大手プロダクションが幅をきかせるシステムの中で、いつも「住みにくい」と強く感じていた。日本では「変わり者」といわれ、いつも輪の中からはじき出されたような疎外感を感じていた。だからといって、そんな世界に合わせることは苦手だ。