日本人にとって中国人と名刺交換するのは、少し気が重い。 相手はしげしげとこちらの名前の字面を見てから、中国語の発音で名前を読み上げる。ローマ字の振り仮名が振ってあると、さらに眉根を寄せて考えもする。彼らが予想していた中国語読みの漢字音とずいぶん異なるためだ。 私の名前・井上を例にとると、日本語読みの発音は「Inoue(イノウエ)」だが、中国語の発音では「Jingshang(正確な発音ではないけれど、あえてカタカナにするならチンシャン)」となり、日中双方の言葉を理解しない者には同じ人物とは判別できない。日中で大きく異なる漢字の発音は日本人にとっても、中国人にとっても同じようにコミュニケーション上の大きな障害だ。 さらに中国人にとっては、日本人の名前はどこまでが「姓(family name)」で、どこからが「名前(given name)」なのか、はっきりしない。 しかも日本人の名前は一般に中国