日本の歴史の中で文学的天才と言えば三島由紀夫と空海が思い浮かぶ。やはりこういう天才は、教育がしっかりとした家庭で生まれているのである。三島由紀夫は祖父が官僚として失脚したので暮らしぶりは傾いていたようだが、それでも、祖父から三島由紀夫まで三代東大卒の官僚なわけである。空海(774-835)も家は武士であるが、母方は学者の家系であり、阿刀大足という大学者が空海の叔父であった。空海の家はそこそこ裕福な武家であったのに加えて、学者の叔父さんから勉強を教えて貰っていたのだから、かなり環境に恵まれているのである。空海の漢文の素養のすさまじさも、環境がもたらしたものである。この当時ひとつしかない大学に空海は入学し、勝手に中退して世捨て人となったのだが、31歳になって遣唐使に参加している。このあたりの経緯はあまりよくわからないが、やはり実家が裕福だから何かしらコネがあったのであろう。卓越した書家としての