アルツハイマー病をめぐる最もホットな話題は、アルツハイマー病の治療薬開発の理論的な支柱であったアミロイドβ仮説が本当に正しいのかどうかというものです。 2002年に提唱されたこの仮説では、アルツハイマー病の病理は次のように説明されています。まずアミロイドβ(Aβ)が脳の神経細胞外に蓄積し、老人斑を形成すると、タウ蛋白質のリン酸化が起こり、凝集し、神経原線維変化を起こします。次にAβの蓄積の過程で生じるオリゴマーや神経原線維変化が神経細胞の機能障害を誘発し、細胞死に至らしめるという考えです(オリゴマーの毒性の有無やタウの凝集にリン酸化が必要かどうかはまだ議論があります)。 ところがこの仮説に基づいた治療戦略は連敗続きでした。 そのために、「そもそもAβ仮説が誤りだったのではないか?」。こんな疑念が生まれてきました。国内の研究者の中にも、「アルツハイマー病の真の原因はタウであり、Aβを標的とす