とっくに絶望してたTVドラマですが、時に鮮やかな光を放つ作品に出会うことがあります。ここ1年ほどに観た劇映画を含む国産の映像劇で、私には最良の作品でした。 映画とTVドラマの差異は、もはや映像技術ではなく興行形態の違いしかないと思っています。このNHK広島制作53分の単発ドラマは、中篇映画としてシネコンにかけても十分な質感です。芸術祭大賞も当然の出来栄え。 原作・シナリオ・キャスト・美術・音楽・演出、すべてがこれしかないという衝突と調和を見せる。些か言い過ぎかもしれないが、そう思えてしまう。室生犀星の小説からエッセンスを注意深く抽出し、丁寧に人物設定の中に描きこむ。その愛情と節度の鮮やかさ、美しさ。 何と言っても脚本の渡辺あや。その感性の突出。「天然コケッコー」2007でもおぼろげに感じましたが、今回は鮮やか。セリフの魅力をこれほどに感じさせるドラマは久し振りでした。特に尾野真千子演ずる折