■ムード・インディゴ〜うたかたの日々 (監督:ミシェル・ゴンドリー 2013年フランス映画) I. 自分がボリス・ヴィアンを耽読していたのは10代後半から20代にかけてだろうか。最初に読んだのは『赤い草』だったが、これが衝撃的だったのだ。その後、読破こそできなかったが、ハヤカワの全集を買い求め、幾つかの長編と短編を、時に驚嘆しながら、時に首を傾げながら読んでいた(時々ワケがわからなかったのだ)。その中で読んだ『うたかたの日々』は、「20世紀で最も悲痛な恋愛小説」という評価とは裏腹に、異様なほどの狂騒とアイロニーに満ちた作品だったと記憶している。 今回ミシェル・ゴンドリーにより映画化された『ムード・インディゴ〜うたかたの日々』の原作『うたかたの日々(「日々の泡」というタイトルの訳本もあり)』は、ロマンチックなファンタジーであると同時に、アバンギャルドでアナーキーな描写がふんだんに盛りこまれ、
大石圭の原作(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20090529/1243576452)を映画化! 岬奈緒子は不妊治療専門の医師。だが、腕と実績のみならず美貌も評判の彼女にはもう一つの顔があった。「セリカ」……会員制のSMクラブに所属するM嬢。15歳の頃、奈緒子は隣家に住む男に拉致され、一ヶ月に渡って監禁され、陵辱の限りを尽くされ、男を殺害しその境遇から逃れ出た。そして現在、彼女をそうした生き方に駆り立てるものは何なのか? なんだかんだ言って大石圭の小説も、三本目の映画化。『最期の晩餐』(原作『湘南人肉医』)、『1303号室』に続いてということになる。もう結構メジャーな作家になったのかな……。今、大人気の壇蜜を主演に据えて、まあまあ話題性もあったし、ヒットしたのであろうか。まあ大阪は某劇場での独占公開で、いいのか悪いのか、という感じであったが……。 個人的に
スティーヴン・キングの新作長編のタイトル『11/22/63(イチイチ・ニイニイ・ロクサン)』とは、1963年11月22日に起こった或る出来事を指している。それは、第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが、ダラスで遊説中暗殺された、あの歴史的事件の事である。この物語は、ふとしたことから過去への扉を発見してしまった男が、このジョン・F・ケネディ暗殺を阻止するために、恐るべき時間旅行の旅に出る、といったストーリーなのだ。 ここで現れる"過去への扉"のルールがまず面白い。まず、この扉は1958年9月9日のアメリカのある決まった土地にしか繋がっていない。そして、時間旅行をした後もう一度過去へ戻ると、それ以前の時間旅行で行ったことはリセットされ、やはり1958年9月9日に戻ることしかできないのだ。だから1963年のケネディ暗殺を阻止するためには、過去の世界で5年間過ごさなければならない。当然
監督:白石和彌 脚本:高橋泉/白石和彌 凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫) 作者: 「新潮45」編集部出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/10/28メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 162回この商品を含むブログ (47件) を見る この映画は実際の事件を元にしている。 つい、こないだ、NHKで放映された「尼崎連続変死事件」のドキュメンタリーでも目を覆うような現実が、「プライベート」の壁の向こう側で、世間に知られることなく進行していたことを描いていて、多くの視聴者を戦慄させた。 暴力と殺人。この見えざる世界にある、どうしようもないもの。この世界には静かにそして確実に染みいっている。 僕らの世界は予断で出来ている。とは前に書いた。この世には目を覆うような残酷な現実など、そこら中に転がっていて、でも僕らはそれをのぞきみようとはせず、日々生きている。僕らが主に知るのはそれに付
■トランス (監督:ダニー・ボイル 2013年イギリス映画) "コンゲーム"というのは「信用詐欺」の意味だが、物語のジャンルで使われるときは「詐欺や騙し合いをテーマにした犯罪サスペンス」ということになる。映画だと『スティング』や『「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』あたりが有名どころだろう。ダニー・ボイル監督の最新作『トランス』は詐欺や騙し合いが直接的に描かれる作品ではないが、【主人公の記憶】に主人公を含む登場人物たちが騙されてゆく、といった意味ではある種のコンゲーム映画といえるのかもしれない。 物語は40億ともいわれる絵画がオークション会場から強奪されるところから始まる。しかしこの物語は単純な強盗モノのサスペンスと思わせておいて、次第に【記憶の錯誤】を巡るサイコロジカルなストーリーへと逸脱してゆくのだ。 主人公の名はサイモン(ジェームズ・マカヴォイ)。彼はオークションの競
エロティックマンガの世界的巨匠、ミロ・マナラの作品が初邦訳されました。 ●ミロ・マナラ『ガリバリアーナ』(鵜野孝紀訳、2013年パイインターナショナル、2200円+税、amazon) 出版社からご恵投いただきました。ありがとうございます。でかいA4判ハードカバーでオールカラー60ページ超。ただし居間に本を置いてたら、高校生の娘が見るやないかっと妻からえらいこと怒られました。いやまあ性器ほりだしのマンガですから。 ミロ・マナラが最初に日本に紹介されたのが、エロが控えめで世界中で傑作とたたえられてる『インディアン・サマー』でも『エル・ガウチョ』でもなく、アレハンドロ・ホドロフスキーと組んだ『ボルジア』でもなく、アメリカから請われて描いたX-MENシリーズの一篇『X-Women』でもなく、バカエロマンガ『ガリバリアーナ』であったという。いやー、ミロ・マナラらしくていいじゃないか。 漫棚通信ではこ
特別なものなどなにもない。吾妻ひでお「アル中病棟」 吾妻ひでお「アル中病棟」を読む。 何がすごいって、これだけ悲惨な状況にもかかわらず、自己憐憫なし、自己絶望なし、ルサンチマンなし。「わたくし」漫画にもかかわらず自己言及をサラリとかわして自己も他者も、はては死すら等間隔に描く。 「わたくし」小説なり漫画なりになると、自分だけが特別な存在であり、憐れな存在であり、そんなかわいそうな私を疎外するのが無理解な他者や社会であるという風になりがちである。 しかしそんな自己憐憫、自己嫌悪、ルサンチマンといった、「わたし」「私」「自分」「自己」で埋めつくされる「わたくし」系の陥穽をヒラリといともたやすくかわしてしまうのが吾妻ひでおである。 吾妻は「わたし」と「あなた」をまるで同じようなものであるかのように描く。アルコール中毒患者の人々はみな愚かで滑稽な人々ではあるのだが、吾妻は誰一人としてわけへだてする
「するかしないかの分かれ道で、する!というほうを選んだ勇気ある人々の物語です」(荻昌弘) ボクは以前から決めているのですが、「好きな映画はなんですか?」と訊かれた時 「ロッキーです」 と断言即答することにしています。 通常、映画ファンであればあるほど、上記のよくある質問には答えにくいものです。一本なんか決められないからです。 個人的にはボクを映画道に引きずり込んだ『ジョーズ』をあげるのが順当ですし、疑問の余地なく「一番好きな映画」なのですが、『ジョーズ』はもうそういう次元でもないといいますか。 では、即答してまったく問題ない映画はなんだろう? と考えた時に、真っ先に浮かんだのが『ロッキー』です。 もちろん『ロッキー』もそんな次元ではないといえばないんですが。 ともあれ、『ロッキー』は間違いなく「一番好きな映画」です。断言してもいいのですが、この映画以上に好きな映画は存在しません。 このブロ
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