サントリー文化財団が創立40周年を迎え、サントリー学芸賞も40年の歴史を刻んだ。『サントリー学芸賞選評集2009~2018』(サントリー文化財団刊, 2019)に掲載された受賞作のリストや受賞者の文章を読むと、「学芸」の圧巻の蓄積が行間に滲み出てくるのを感じる。 象牙の塔の干からびた論文とは異なる、人としての研究者、作者が掴んだ「知」を香り高く昇華させた著作群が、未来にわたる持続的な価値を学芸賞にもたらしている。受賞からもれた作品も同様の貢献を果たしてきたと思う。 サントリー学芸賞のオリジナリティを40年にわたって高め続けてきた関係者、研究者の努力に心からの拍手を送りたい。 と言いながら、賞の今後については気になることもある。受賞作品にいわゆる「文系」と「理系」の分断を超えた作品が多くないように感じられることだ。 サントリー学芸賞は、サントリー文化財団のHPによれば、「広く社会と文化を考え