10月半ば、モスクワ南部で大規模な暴動が発生した。コーカサスのアゼルバイジャン出身者とみられる男に、ロシア人男性が刺殺されたことをきっかけに、コーカサス系移民に対する反発が暴力的な形で爆発したのだ。 筆者はかつて、似たようなテーマの原稿を執筆していたが(モスクワ暴動――高まる民族主義の危険)、ロシアにおけるコーカサスや中央アジア出身者に対する反感は収まるどころか、3年前よりむしろ強まっているとすら見える。 暴動の引き金となったのは、南コーカサスに位置するアゼルバイジャン出身の出稼ぎ労働者が、25才でロシア人男性のイゴール・シュチェルバコフを殺害したとされる事件である。シュチェルバコフは、10月11日未明に婚約者と帰宅中に刺殺されたという。当初、逃走した容疑者を捜索するため、警察は目撃者への事情調査や警備用の監視カメラに写っていた容疑者の写真などにより捜査を進めていった。初期の報道では容疑者