平等と自由とは、人間にとってかけがいのない価値である。しかし、過度にそれを求め、実現しようとごり押しすると、逆の結果を生み出すことになる。平等はマルキシズムが重視したが、結果として“ソ連”という社会を作り上げた。自由を重んじたアナキズムは、学生運動などを通じて無秩序な状態をもたらした。1980年代には両者ともに衰退してしまう。 しかし、環境問題が世界化する中、この両者が新たな装いのもと復活し始めた。特に、アナキズムは、エコロジー創世時代に深い関わりをもった思想であり、一貫して環境危機に関心を抱き続けた思想である。では完全なる自由と、一切の支配を否定する平等の思想であるアナキズムは、どのように環境問題を考え、そして解決しようとしているのだろうか。 エコロジーに関心を持つアナキズムの著名な理論家がマレイ・ブクチンである。環境思想研究家ロデリック・ナッシュは、ブクチンほど長く熱心に環境問題を研究