顕微鏡技術は目覚ましい進化を遂げている。2014年にノーベル賞を受賞した超解像顕微鏡の開発は記憶に新しい。今や光の波長による分解能の限界(回折限界)を乗り越えて、超微細構造を驚くほど鮮明に観察可能だ。さらに近年、分厚い組織を丸ごと観察するための組織透明化試薬が開発されたことで、例えば脳科学の分野では、複雑な神経回路の立体構造を維持したまま、神経同士の微細な接続構造を観察することも可能だ。これまでにいくつかの組織透明化試薬が開発されてきたが、さらに深部まで、さらにクリアに観察するための技術開発が求められている。 理研CDBの柯孟岑(カ・モウシン)国際特別研究員(感覚神経回路形成研究チーム、今井猛チームリーダー)らは、分厚い組織のより深部まで高解像観察が可能な改良型透明化試薬「SeeDB2」を開発した。さらにこの試薬で処理したマウス脳サンプルを用いて、樹状突起のトゲ状の構造(スパイン)やシナプ