誰もが自分の目を、耳を、疑った。それはイチローも同じだった。 「(通訳の)アランから連絡があって、なに言っているの? って……。最初はアランの頭がおかしくなったのかと思った」 9月25日、午前9時。試合開始4時間前のことだった。ボート事故によるホゼ・フェルナンデス投手の急死の訃報にイチローだけでなく、マーリンズ関係者の誰もが頭の中を整理できずにいた。深い悲しみに包まれ、試合はキャンセルされた。 わずか11時間前まで、彼はチームメイトとともに、そこにいた。 屈託のない明るい性格で常に笑顔を振りまき、マウンドに上がれば三振の山を築き、スコアボードに「0」を並べる。今季も16勝、253奪三振、チームの絶対的エースだった。自信に満ち溢れたパフォーマンスと喜怒哀楽を素直に表現する立ち振る舞いはまさに“やんちゃ坊主”そのものだったが、24歳の輝かしい未来は突然に消えてなくなった。 イチロー「後ろで守っ