政策現場で「ナッジ」と呼ばれる手法が広がり始めた。行動科学の知見を生かし、文書の文面を変えるといった心理に働きかけるちょっとした工夫で人々を動かすことを狙う。補助金や規制などの従来の手法よりコストも手間もかからず、中央省庁や地方自治体の期待は大きい。(松尾洋平)【関連記事】ノーベル賞で注目の「ナッジ」 動機や競争心刺激、行動に変化生むナッジの効果の実証例として知られるのが、東京都八王子市の試みだ。同市は2016年、大腸がん検診を受けていない人への案内文にちょっとした仕掛けをした。パターンAは「今年度受診した人は来年度も検査キットを送ります」と利益を強調。逆にパターンBは「今年度受診しないと、来年度は検査キットをお送りできません」と損失を前に出した。人間は利益より損失に強く反応するという「プロスペクト理論」と呼ぶ考え方がある。実際に八王子市の試みでは