秋山真之の出家志願を弱音と言ってのける好戦趣向 『坂の上の雲』は黄海海戦で作戦参謀役を務めた主人公・秋山真之を次のように描いている。 「・・・・真之はこの追跡時間中、もはや人間の力ではどうにもならぬ状況下で、かれはかつてやったことのない精神の作業をせざるをえなかった。神仏に祈った。秋山真之というこの天才の精神をその晩年において常軌外の世界に凝固させてしまったのは、この日露戦争における精神体験によるものであった。かれは、渾身の精気をこめて天佑の到来を祈った。」(第4分冊、51ページ) つまり、黄海海戦で凄惨な体験を味わった真之はその体験を戦争という外界に向けるのではなく、内面の精神体験に閉じ込めたのである。もっとも、上の引用文の末尾に記されているように、真之は日露戦争が終わったあと、出家を口にする。原作はこの点にも言及している。 「『作戦ほどおそろしいものはない』と真之はつねにいった。この人
![職業軍人の国家への至誠を美化する戦時思想~『坂の上の雲』は軍国日本をいかに美化したか(第3回)~ - 醍醐聰のブログ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/0416f21ca9966f8763eb00187d833c917a300493/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fsdaigo.cocolog-nifty.com%2F.shared-pleasy%2Fnifty_managed%2Fimages%2Fweb%2Fogp%2Fdefault.png)