待ち合わせは十時。駅前で、彼女はほぼちょうどの時刻にやってきた。 待った?と聞くので大丈夫と答えた。 実際俺が来たのは十五分前で、誤差のようなものだった。天気は小春日和で風が心地よく、今日は公園でお花見をしようという話になっていた。 駅から公園に向けて色々と話ながら歩き、昨今亡くなった著名人のことが話題に上がった。 彼女も氏の著書を嗜んでおり、◯◯は名作だよねと朗らかに語った。そして「こんなに早くに死ぬなんて思わなかった」という。俺はすぐにそうだね、こんなに早くに亡くなるなんて。そう付け加えるように言うと、彼女はニュースで死んだって聞いたとき本当に驚いたと言った。俺は閉口した。 その後も歩き続けていると古書店が目に入り、気になったのでちょっと寄っていい?と尋ねるといいよというので少し寄ることにした。 引き戸を開けて中に入ると開店してまだ間もないためか人の姿はなく、こじんまりとした店内を悠々