現代詩に関するmurasaki_kairoのブックマーク (12)

  • 伝承異聞「自動車」|ムラサキ

    自動車がまだ珍しかった頃の話。 舗装もされていない村道に土煙を立てて自動車が走ると、近所の子どもたちがその後ろを追いかけるのであった。 ある日、村道をまた一台の車が走っていった。村の衆はまた車が通りよるわいと、畑から車に目をやった。 車の天井に女が立っていた。 白い着物を着ている。 車は女を乗せたまま走っていく。 村道を走るとき、大抵の車はがたがた揺れるが、その女が揺れている様子はない。 異様な気配を察して子どもたちもその時ばかりは車を追いかけることをやめた。 ただ、自動車が珍しい時代である。 村人たちも自動車とはああいうものなのかもしれないと自らを納得させて、口々に 「はて」 と呟いただけだった。 「しかし」 と当時を振り返り老爺は語る。 「今考えりゃ異常だ。」 ちなみにその時走った車は当時、村にあったどの車でも無かったという。 同じ古翁から自動車にまつわる話をもう一話伺う。 時代が下っ

    伝承異聞「自動車」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2018/01/13
    民話や昔話が好きなので、自分で作るようになりました。創作民話と呼ぶそうですが、民話って語り継がれたものだから創作の時点で偽物感が強いですよね。 なんか良い呼び名がないかなあ。
  • 幻燈紀行「岩窟の村」|ムラサキ

    冬になると訪れたい村がある。 その村は山を幾つも越えた所にあるので、中々に足が遠い。交通機関も不便である。 冬の日の数日を過ごすため、僕はその村に向かった。町からバスに乗って二時間かかる。 案の定途中で乗客は皆降りた。 寡黙なバスの運転手と寡黙な僕は黙々と山道を進んだ。 途中、運転手に一度だけ話しかけられた。 「お客さんは何をしに行きなさる?」 僕はなるべく丁重に返事を返した。 「冬になると、僕は何故かその村が恋しくなるのです。村をまとう温もりがそうさせるのでしょう。」 「温もりがあるかね。」 「ありますよ。少なくとも宿屋には。」 「あの村の宿は一つしかない。」 「そうだったかな。宿の人たちは良い人ですね。」 会話はそれで終わった。 岩壁に挟まれた隘路を越えてバスは村へと到着した。 僕は寡黙な小旅行の同伴者であった運転手に挨拶をした。 「直ぐに町へと戻るんですか?」 「これはバスだからね。

    幻燈紀行「岩窟の村」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2018/01/13
    旅行に行きたくなると旅小説を書きます。まだ見たことのない不思議な街や人々に出会いたい。でも出不精で人見知りなので小説に夢を託しています。
  • 猫だって翼があれば飛べる|ムラサキ

    ジャングルジムのような家で育った よく考えればあれはごみ捨て場だった 俺が兄弟と思っていたものは孤児たちで 親と思っていたものは 孤児を売買する仲買人だった ゴミ捨て場のマガジンが世界の全てで ある日拾ったマガジンの ポーンスターのピンナップが 俺の神になった 仲買人はヤクを決めると 俺たちを集めて 終末の悪魔がもたらす厄災の話で 俺たちをビビらせた しかし仲買人はとうとう 神様自身の話をしなかったので 俺達はめいめいが 自分の神様を作って 毎日の礼拝を捧げていた 兄弟たちは ホモセクシャルに走る奴もいたが そいつらは大抵 変な病気になったので 俺はセックスは悪いことだと 考えるようになった 俺のピンナップの神様は 俺達とは全く違う造形で 美しかった 何より凄く太っていて 俺達みたいに痩せてない 分厚い真っ赤な唇 真っ青な瞼 すべてがセクシーだった 兄弟たちは買われたり 消えたり 増えたり

    猫だって翼があれば飛べる|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2018/01/13
    廃退的な文章が書きたくて 小説みたいな詩みたいな物を書きました。 昔観た映画に影響を受けています。ナチスの将校がユダヤ人の少女に恋をして歪な愛情を注ぐと言った内容なんだけど、タイトル忘れました。
  • 短編小説「夜のプールと古代生物」|ムラサキ

    「夜のプールと古代生物」村崎懐炉 高校の構内にあるプールに真夜中、僕たちは忍び込んだ。 防犯用の青いLEDライトが水面に反射して揺れていた。 「博物館に行くのが好きだったんだ。」 と僕は言った。 博物館の階段の下には人造池が造られていた。そこには水が張られて鯉が泳いでいた。もしかしたら水草も生えていたかもしれない。 僕の記憶が曖昧なのはその場所の照明がいつも消されていて、人造池は影の落ちた黒い水たまりでしかなかったからだ。 時折見える錦鯉の背中以外にどのような生き物がその黒い水たまりにいるのか、幼い僕には想像するしかなかった。 階段下の黒い池に棲む生き物たちについては、当時夢中になって読んでいた古代生物図鑑がリンクされて、その場所は僕の中ですっかり白亜紀の森林にできた溜池と化していた。 石畳の人造池の底にはきっと扁平な頭をしたディプロカウルスが両生類特有の緩慢な動作で這い回っているに違いな

    短編小説「夜のプールと古代生物」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/15
    光の粒子が水の中に満ちていくのが好きです。
  • 短編小説「博物館にて」|ムラサキ

    「博物館にて」村崎懐炉 博物館に行ってブラキオサウルスの骨格標を見上げていると、その年老いたブラキオサウルスは物静かに語るのであった。 昔は良かった。 こんなに狭々としていなかったし。 自由闊達としていたものだよ。 かつて彼にも同族の友人がいた。 彼らは午後の安らいだ時間を散歩や読書に充てて楽しんだ。時に詩論を討議し、熱を帯びて熱い紅茶の入ったソーサーを揺らした。 ブラキオサウルスたちはのんびりとしているので彼が友人と思っていた個体は彼より10歳も年上であったということ。 そして10歳年上であるということは少なくとも彼より10年は早く死期が訪れるだろうことに彼が気づいたのは、友人が死に瀕したその日である。 彼は友人のために樹木の枝葉を口元に運んだ。 友人は静かに笑っていた。 苦しくないか。 そう尋ねた。 苦しくはない。 友人はそう答えた。 何かして欲しいことはないか。 そう聞くと 友人

    短編小説「博物館にて」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/15
    薄暗い博物館にてライティングされた古代生物の骨格標本に僕はわくわくとした興奮を禁じ得ない。
  • 現代詩 硬派にいきたいんだ|ムラサキ

    現代詩 硬派になりたい 村崎カイロ どうせ僕は背が低くて 背で撫肩で 近眼で牛乳瓶の底みたいな 眼鏡をかけてるし 自分のこと俺なんて 呼べるキャラじゃないし 女の子が着いてくるタイプじゃないし むしろどちらかと言うと頼み込んで 着いていく方だし 居場所はいつも端っこで 何をやっても目立たない 居場所はいつも端っこで 何をしてても気付かれない それでも硬派になりたいんだ 肩で風を切って 往来の真ん中を歩きたいんだ 分かるだろうか 君にこの気持ちが 男が男に惚れるような 格好良さってあるじゃないか 自分を曲げない信念と 人を愛する大きさと 朗らかに笑い飛ばせる剛直と 格好良さってあるじゃないか しかしながら僕はといえば 居場所はいつも端っこで レストランの注文も いつまでも取りに来てくれない それでも硬派になりたいんだ 肩で風を切って 往来の真ん中を歩きたいんだ 男が男に惚れるような 格好良

    現代詩 硬派にいきたいんだ|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/11
    硬派になりたい と思っていたら 偏屈になった
  • 現代詩「追走」|ムラサキ

    現代詩 追走 村崎カイロ救急車が走り去ったので 僕は後から車で追いかける 救急車のやつは早いから どんどん先に進んじまう 車の列をすり抜けるしさ 赤信号でも止まらないしさ 当に速いんだ 僕はいつまでも右折できずに もたもたしてばかり このもどかしさったら 嫌になっちゃうな テールランプが列を作って 車は中々進まない ブレーキを 踏んで離しての繰り返し 嫌になっちゃうな こんな時の路上は 赤信号ばかり 僕はその度に止まってさ 赤信号をぼんやり見てる 眩しくてさ 嫌になっちゃうな ごめんね 早く着いて 一緒にいてあげたいのにさ 遅くなってごめんね 雨まで降ってきてさ 濡れた路面に ブレーキランプと赤信号 まるで 路面に咲いた 彼岸花

    現代詩「追走」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/11
    救急車を後追いします。 胸がざわめきます。
  • 現代詩「精米」|ムラサキ

    現代詩 精米 村崎懐炉 田舎から届いた米は玄米であったので どうしたら良いか分からぬまま 僕は15キロの米を抱えて 街に出た 精米所を見つけたが混雑していて 順番が訪れない 玄米を精白してくれる所を探して 僕は街をさまよった 街角に毛皮を着た娼婦が立っていた 米の精白について尋ねたが 彼女が語るのは 場末に流れ着いた男と女の ロマンスばかり 僕はロマンスなど持たぬので それなりに興味津々に聞いていたかったが 米が重いのでお別れをした 最後に娼婦は僕の頬にキスをして またね、と言った 僕もキスを返してまたね、と言った 米は益々重いのだ 僕はハローワークで精白について尋ねたが ハローワークで斡旋されるのは 営業職ばかり 知らない人と話すことができる上手な話術を教わった それなりに興味津々に聞いていたかったが 米が重いのでお別れをした ハローワークの人が名刺をくれた 僕も握手をしてお礼を言った

    現代詩「精米」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/11
    生まれて初めてコイン精米所に 入りました。 昔からあちこちの駐車場の端っこに置かれているアレが気になっていました。 意外と安かったのと精米は面白かったです。
  • 現代詩「USBメモリを無くした」|ムラサキ

    現代詩 USBメモリを無くした 村崎懐炉 僕のUSBメモリがなくなってしまった 職場のPCに挿したまま 忘れて帰って 気付いたときにはなくなっていたのだ メモリの中にはこれまでに手掛けた仕事が全て入っているのに 撮りためた旅行写真が入っていたのに あなたに宛てた愛の言葉も残っていたのに これまでの苦労と思い出と将来を含めて僕はなくしてしまった 東京の雑踏を 人にぶつからずに歩くには みんながメモリーを持っているからだ 空の色が青いということを 知っているのは みんながメモリーに保存しているからだ 明日という日がくることを 世界が平和に満ちていることを 人類が慈愛に満ちていることを そういう当たり前のことを 僕はなくしてしまった 僕はいまアンパンをべている べてみて思い出したのだけど 僕はアンパンが好きじゃない だってあんこが甘いし 甘いものは好きじゃないんだ 今晩 僕は月を見て 月に暮

    現代詩「USBメモリを無くした」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/10
    USBメモリが無くなりました
  • 現代詩「孤島」|ムラサキ

    「孤島」 村崎懐炉 孤島の岬に立って海を見つむる そんな時間が必要だ 岬で好きな詩を諳んじる そんな時間が必要だ そこにいるのは 私であって もはや私でないかもしれぬ 一匹の獣が人間のふりをして 読めもしないポエジーを 鳴いているだけやもしれぬ そういった拙さを打ち消して 波は静かに満ちていく 孤島の岬は そんなところだ 私の語る数々の 告白をしらんぷりして 聞き流す もしか空飛ぶ海鳥が 其れを聞いているかもしれぬ その海鳥が 海を渡って 子々孫々に 私の嗚咽を伝えるやもしれぬ もしか子々孫々が かくのごとき戯言を 聞きたくあれば 波の音を聞くが良い 静かな波は私の 静かな声をなぞらえる 荒ぶる波は私の 荒ぶる声をなぞらえる 日々の単調な繰り返しを 波は果てなくなぞらえる 今私はこうやって うそぶきながら 耳を澄まし 波に溶けたちちははの 数々の声を聞いているのだ 言の葉は 波間に落ちて魚

    現代詩「孤島」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/10
    独りになりたいときがあります
  • 現代詩「水鳥」|ムラサキ

    現代詩 海鳥 村崎懐炉 ご覧 水鳥が 川面に波を曳いている 川を斜めに分断して 悠々と泳ぐ水鳥が 分け隔てた あちら側とこちら側 北からやってきた異邦人が 路地裏の雑居ビルの地階バーに 羽を休めていた 彼らの言葉を知らないので 彼らがため息をつきながら 語っている悲哀が僕には分からない 背中を丸めた一人の男が すすり泣く声が聞こえる 隣の男が背中に手を当てた 男たちの羽毛は 未だ薄汚れて 祖国の悲哀を落とせずにいる 時期がくれば帰ることもできる その時を待って身を休めて 川の流れは緩やかで とうとうとして 穏やかで 昇り始めた朝日を 反射している 呼気が白い ポケットに手を突っ込んで 僕は背中を丸めて 鏡のような川面を見ている 水鳥の引いた曳き波が 僕にとっては 一つの境界で あちら側にはきっと 明るい未来が待っているのだと 僕は今日一日を過ごす 黒い羽の男たちは祖国へ帰る 水鳥たちは北へ

    現代詩「水鳥」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/10
    朝の川面を水鳥が泳いでいました。
  • 現代詩「マクドナルド」|ムラサキ

    現代詩 マクドナルド 村崎懐炉マクドナルドのドライブスルーで買う夕飯は 手抜きであるかもしれないが 僕にとっては遠き日の懐かしい味 昔は外なんて機会がなくて 持ち帰りのマクドナルドはご馳走だった 卓の上は煮物ばかりの毎日で 洋風の献立が並ぶことは稀だった 僕は煮物に嫌気がさしていたし アメリカ映画が流行っていたし そんな頃に 商店街にできたマクドナルドは憧れだった 貧相な商店街に光る赤と黄色が眩しかった いつの間にか時間が経って 僕はご飯をべるだけの人から たまには作る人になった 日曜日の夕飯は お魚にしようかお肉にしようか お野菜は何が安いか スーパーを歩いて考える だけれど今日は一人でご飯をべるものだから 台所には立たずに ちょっと手抜きで済ませるんだ 考えてみれば かつてアメリカ風のご馳走は 今では手抜きと言われるように なったんだな それくらい世の中は変わったし 僕も変わっ

    現代詩「マクドナルド」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/10
    今日の夕飯はマクドナルドでした。
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