2018年1月13日のブックマーク (3件)

  • 伝承異聞「自動車」|ムラサキ

    自動車がまだ珍しかった頃の話。 舗装もされていない村道に土煙を立てて自動車が走ると、近所の子どもたちがその後ろを追いかけるのであった。 ある日、村道をまた一台の車が走っていった。村の衆はまた車が通りよるわいと、畑から車に目をやった。 車の天井に女が立っていた。 白い着物を着ている。 車は女を乗せたまま走っていく。 村道を走るとき、大抵の車はがたがた揺れるが、その女が揺れている様子はない。 異様な気配を察して子どもたちもその時ばかりは車を追いかけることをやめた。 ただ、自動車が珍しい時代である。 村人たちも自動車とはああいうものなのかもしれないと自らを納得させて、口々に 「はて」 と呟いただけだった。 「しかし」 と当時を振り返り老爺は語る。 「今考えりゃ異常だ。」 ちなみにその時走った車は当時、村にあったどの車でも無かったという。 同じ古翁から自動車にまつわる話をもう一話伺う。 時代が下っ

    伝承異聞「自動車」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2018/01/13
    民話や昔話が好きなので、自分で作るようになりました。創作民話と呼ぶそうですが、民話って語り継がれたものだから創作の時点で偽物感が強いですよね。 なんか良い呼び名がないかなあ。
  • 幻燈紀行「岩窟の村」|ムラサキ

    冬になると訪れたい村がある。 その村は山を幾つも越えた所にあるので、中々に足が遠い。交通機関も不便である。 冬の日の数日を過ごすため、僕はその村に向かった。町からバスに乗って二時間かかる。 案の定途中で乗客は皆降りた。 寡黙なバスの運転手と寡黙な僕は黙々と山道を進んだ。 途中、運転手に一度だけ話しかけられた。 「お客さんは何をしに行きなさる?」 僕はなるべく丁重に返事を返した。 「冬になると、僕は何故かその村が恋しくなるのです。村をまとう温もりがそうさせるのでしょう。」 「温もりがあるかね。」 「ありますよ。少なくとも宿屋には。」 「あの村の宿は一つしかない。」 「そうだったかな。宿の人たちは良い人ですね。」 会話はそれで終わった。 岩壁に挟まれた隘路を越えてバスは村へと到着した。 僕は寡黙な小旅行の同伴者であった運転手に挨拶をした。 「直ぐに町へと戻るんですか?」 「これはバスだからね。

    幻燈紀行「岩窟の村」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2018/01/13
    旅行に行きたくなると旅小説を書きます。まだ見たことのない不思議な街や人々に出会いたい。でも出不精で人見知りなので小説に夢を託しています。
  • 猫だって翼があれば飛べる|ムラサキ

    ジャングルジムのような家で育った よく考えればあれはごみ捨て場だった 俺が兄弟と思っていたものは孤児たちで 親と思っていたものは 孤児を売買する仲買人だった ゴミ捨て場のマガジンが世界の全てで ある日拾ったマガジンの ポーンスターのピンナップが 俺の神になった 仲買人はヤクを決めると 俺たちを集めて 終末の悪魔がもたらす厄災の話で 俺たちをビビらせた しかし仲買人はとうとう 神様自身の話をしなかったので 俺達はめいめいが 自分の神様を作って 毎日の礼拝を捧げていた 兄弟たちは ホモセクシャルに走る奴もいたが そいつらは大抵 変な病気になったので 俺はセックスは悪いことだと 考えるようになった 俺のピンナップの神様は 俺達とは全く違う造形で 美しかった 何より凄く太っていて 俺達みたいに痩せてない 分厚い真っ赤な唇 真っ青な瞼 すべてがセクシーだった 兄弟たちは買われたり 消えたり 増えたり

    猫だって翼があれば飛べる|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2018/01/13
    廃退的な文章が書きたくて 小説みたいな詩みたいな物を書きました。 昔観た映画に影響を受けています。ナチスの将校がユダヤ人の少女に恋をして歪な愛情を注ぐと言った内容なんだけど、タイトル忘れました。