2017年12月15日のブックマーク (2件)

  • 短編小説「夜のプールと古代生物」|ムラサキ

    「夜のプールと古代生物」村崎懐炉 高校の構内にあるプールに真夜中、僕たちは忍び込んだ。 防犯用の青いLEDライトが水面に反射して揺れていた。 「博物館に行くのが好きだったんだ。」 と僕は言った。 博物館の階段の下には人造池が造られていた。そこには水が張られて鯉が泳いでいた。もしかしたら水草も生えていたかもしれない。 僕の記憶が曖昧なのはその場所の照明がいつも消されていて、人造池は影の落ちた黒い水たまりでしかなかったからだ。 時折見える錦鯉の背中以外にどのような生き物がその黒い水たまりにいるのか、幼い僕には想像するしかなかった。 階段下の黒い池に棲む生き物たちについては、当時夢中になって読んでいた古代生物図鑑がリンクされて、その場所は僕の中ですっかり白亜紀の森林にできた溜池と化していた。 石畳の人造池の底にはきっと扁平な頭をしたディプロカウルスが両生類特有の緩慢な動作で這い回っているに違いな

    短編小説「夜のプールと古代生物」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/15
    光の粒子が水の中に満ちていくのが好きです。
  • 短編小説「博物館にて」|ムラサキ

    「博物館にて」村崎懐炉 博物館に行ってブラキオサウルスの骨格標を見上げていると、その年老いたブラキオサウルスは物静かに語るのであった。 昔は良かった。 こんなに狭々としていなかったし。 自由闊達としていたものだよ。 かつて彼にも同族の友人がいた。 彼らは午後の安らいだ時間を散歩や読書に充てて楽しんだ。時に詩論を討議し、熱を帯びて熱い紅茶の入ったソーサーを揺らした。 ブラキオサウルスたちはのんびりとしているので彼が友人と思っていた個体は彼より10歳も年上であったということ。 そして10歳年上であるということは少なくとも彼より10年は早く死期が訪れるだろうことに彼が気づいたのは、友人が死に瀕したその日である。 彼は友人のために樹木の枝葉を口元に運んだ。 友人は静かに笑っていた。 苦しくないか。 そう尋ねた。 苦しくはない。 友人はそう答えた。 何かして欲しいことはないか。 そう聞くと 友人

    短編小説「博物館にて」|ムラサキ
    murasaki_kairo
    murasaki_kairo 2017/12/15
    薄暗い博物館にてライティングされた古代生物の骨格標本に僕はわくわくとした興奮を禁じ得ない。