「夜のプールと古代生物」村崎懐炉 高校の構内にあるプールに真夜中、僕たちは忍び込んだ。 防犯用の青いLEDライトが水面に反射して揺れていた。 「博物館に行くのが好きだったんだ。」 と僕は言った。 博物館の階段の下には人造池が造られていた。そこには水が張られて鯉が泳いでいた。もしかしたら水草も生えていたかもしれない。 僕の記憶が曖昧なのはその場所の照明がいつも消されていて、人造池は影の落ちた黒い水たまりでしかなかったからだ。 時折見える錦鯉の背中以外にどのような生き物がその黒い水たまりにいるのか、幼い僕には想像するしかなかった。 階段下の黒い池に棲む生き物たちについては、当時夢中になって読んでいた古代生物図鑑がリンクされて、その場所は僕の中ですっかり白亜紀の森林にできた溜池と化していた。 石畳の人造池の底にはきっと扁平な頭をしたディプロカウルスが両生類特有の緩慢な動作で這い回っているに違いな