2020年に起きる、前代未聞のスペース・テロを描いた傑作SF。 タイトルにもなっている「軌道の雲」を構築・運用するやり口が現実的すぎて恐ろしい。近未来どころか、今から着手すれば2020年に間に合うんじゃないと思えるくらいリアルだ。モデルとなったテロ首謀国には見せない方がいいんじゃないかと、本気で心配する。 基本原理と問題点は本書に書いてあり、設計はネットで引ける。調達と製造はiPhoneと○○だけで、「全部で千ドルもかかってないぜ。ポケットマネーで作れるんだ、こういうのは」。むかし昔『摩天楼の身代金』で、高層ビルとその住人を丸ごと人質にするアイディアを知ったときと同じくらいのヤバさを感じる。要するに「俺でもできる」だ(足りないのはモチベーションだけ)。それくらい身近な、近未来というよりは現未来。昭和生まれのわたしとっての近未来が、巨大宇宙船や宇宙ステーションなら、平成生まれの主人公の現未来