東京のことを語るとき、いつもうっすら無理している 出身地を聞かれて東京と答えるとき、いつもなんだかはずかしい。うそなんかついていないのに、うっすらと相手をだましているような気分にさえなる。 東京の最北部である板橋区の、橋をわたれば10分で埼玉県に着く街で育った。なにがあるところなの? と聞かれると心底こまってしまう。荒川とイオン、あと……と言いかけてもう言葉に詰まるくらい、これといった見どころのない街なのだ。 『アド街』でかつてわが地元の特集が組まれたとき、名所ランキングの2位が「公園がいっぱい」、1位が「団地」だったといえば、その見どころのなさをわかってもらえるのではないかと思う。映すものがなさすぎたのか、小学生たちが道端でケイドロをしているシーンが1分近く放送され、あの“街に詳しい山田五郎”でさえ「住みやすいと聞いています……」とコメントしたきり黙ってしまっていた。『アド街』で寡黙にな