やがて独裁政治につながる 岩内章太郎氏の『新しい哲学の教科書』は、現代思想の流れがよくわかる優れた作品だ。 ガリレオ、コペルニクスらによって、宇宙像が転換し、「上にいる神」という表象を維持することができなくなった。これが近代思想の出発点だ。 〈神は「高さ」と「広さ」によって人間の生の意味と社会の秩序を保ってきた。高さとしての超越性は、存在不安を打ち消すと同時に超越的なものへの憧れを喚起し、広さとしての普遍性は社会の秩序、とりわけ善悪の秩序に結びついていた。 だが、近代からポストモダンに移行するそのちょうど過渡期にニーチェが「神の死」を宣言したように、歴史的には、宗教的権威とそれにもとづくシステムは徐々に弱体化し、時間とともに神の力は衰えてしまった。この事実は西ヨーロッパに限ったことではなく、近代化が押し進められた多くの場所で広く起こったことである〉 神の死を宣告すれば、絶対的に正しい価値観