若気の至りとは恐ろしいもので、初めて見たときは巨匠も老いたなぁ、という陳腐な感想しか浮かばなかった。黒澤明監督が晩年にメガホンをとった「夢」は、バブル真っ最中の平成2年に封切られた。 ▼「こんな夢を見た」という字幕で始まる8つのエピソードは、自称黒澤ファンを大いにとまどわせた。「七人の侍」や「用心棒」のようなテンポの良い血湧き肉躍る演出は影も形もなく、何度も舟をこいだ。 ▼そんな退屈な映画なのに、最終章で笠智衆が、天寿をまっとうして亡くなった老女を「祝う」ため村人たちと踊る場面は、今でも鮮烈に覚えている。2年前に福島第1原発事故が起こった直後は、富士山が原発の爆発で赤く染まるシーンをとっさに思い出した。 ▼巨匠は「夢」で原発事故を予知したのだろうか。そんな夢の不思議が、科学的に解き明かされる日がやってくるかもしれない。京都府にある研究所が、世界で初めて夢の解読に成功したという。 ▼将来は画