読書は人間性を向上させるのかいきなりで申し訳ないのですが、私の悩みを聞いてください。私は、人生でいちばん大事なことは読書だと信じて、いままで生きてきました。とにかく本を読むのが好きで、あらゆるものごとの最重要事項として読書を優先してきたのです。自分でも「こんなに必要かね」と思うほど大量の本を買い、ひたすら読み続けています。これまで、その選択に迷いや後悔はいっさいなかったのですが、最近になって、この人生は正しかったのかと疑問が生じてきました。というのも、読書をすることで自分自身の人格、人間性が向上したという感覚がまったく得られないためです。 読書には「ためになる」「視野が広がる」というイメージがついてまわります。あたかも、読書をすることで人格が向上するような喧伝をされ、「読書は無条件でよいこと」という言われ方をする傾向があるわけです。こうした言説がさしたる検証もないまま流布した結果、読書には