総視聴率の低下に加え内外から寄せられる批判――テレビの凋落に歯止めがかからない。それはなぜなのか、神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏が分析する。 * * * CMを流すことと引き換えにクオリティの高いコンテンツを視聴者に無料提供するという民間放送というアイディアは20世紀で最も成功したビジネスモデルである。このシステムは絶対に手放してはならないと私は思っている。だが、このすぐれたビジネスモデルを破壊しているのはテレビ業界自身である。 草創期のテレビにかかわったのは、1960年安保闘争に敗れ、就職先もない“やさぐれた”人々だった。先行モデルもなく制約もない中でこの世代のテレビマンたちは高い創造性を発揮した。 だが、この華やかな成功が結果的にテレビを破滅へ導くことになる。一流大学出の秀才たちがテレビ界に殺到してきたからだ。 秀才は本質的に「イエスマン」であり、前例を墨守し、上司の命令に従うことは