映画『男はつらいよ』シリーズの第一作が世に出てことしは四十年目、また主演の渥美清が死んで十三回忌になる。とあって世間は゛カムバック寅さん″ブームだが、寅のせりふでいちばん気に入っているのはこれだ。 「てめえ、さしずめインテリだな」 この「さしずめ」という言い回しに、なんとも言えない味とおかしみがある。 第十二作『私の寅さん』では、画家のりつ子に「インテリと便所のなめくじぐらい嫌いなものはねえ。吐き気がすらあ」と言っているそうだ(志村史夫著『寅さんに学ぶ日本人の「生き方」』(扶桑社)。 寅がなめくじ同様インテリが嫌いなのは、やさしくいえばいいものをわざわざ持って回って難しい言い回しをするやからが多いからだろう。ひらがなや日本語を使えばいいところを、難しい漢語やカタカナの外来語を振り回す。学をひけらかすのだ。ハハーン、案ずるにてめえは…と寅がいうのは、嫌悪というよりは軽蔑の対象である。