オルタナティブな政治としての市民的抵抗――『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』エリカ・チェノウェス(白水社) 小林綾子(翻訳)国際政治学、紛争平和研究 政治 はじめに エリカ・チェノウェス[小林綾子訳]『市民的抵抗——非暴力が社会を変える』(白水社、2023年)刊行直後の2023年1月、NHKの番組「100分de名著」〔注1〕で、偶然にも、市民的抵抗研究の父ジーン・シャープの著作が取り上げられた。なぜ市民的抵抗に関心が集まっているのだろうか。 ひとつは、多くの人びとが、従来とは異なる政治参加を考えているからではないだろうか。本文だけで350頁にわたる、「厚くて熱い」〔注2〕『市民的抵抗』を読者が読み進める一助となることを願い、以下、翻訳をしながら考えた、「オルタナティブな政治」という視点で本書の特徴や課題をまとめる。『市民的抵抗』を引用する場合は括弧で頁数のみ記す。 オルタナティブな政治と