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ブックマーク / synodos.jp (199)

  • 「シルバー・デモクラシー」の虚偽/吉田徹 - SYNODOS

    「シルバー・デモクラシー(シルバー民主主義)」という言葉が人口に膾炙してから久しい。その象徴として、国政選挙での若年層の低投票率などが取り上げられる。これは選挙報道で各党や各党候補者を平等に扱えず、かといって政策検証などは関心をひかないため、中高年視聴者や読者のための恰好のネタでもあるからだ。ただ、その効果は無視できないと見え、メディア関係者のみならず、大学生などと会話していると、日の民主主義の問題点として、必ずといっていいほどなされる主張だ。なお、先の2021年衆院選で60代の投票率は71%、対して20代の投票率は36%だった。 そもそも「シルバー・デモクラシー」は何を意味するのか――もっとも早くこの言葉を使ったのは、著名な政治学者だった内田満が1986年に著した『シルバー・デモクラシー 高齢社会の政治学』(有斐閣)だと思われる。ただ、これは長寿社会を迎える日で、高齢者がいかに政治

    「シルバー・デモクラシー」の虚偽/吉田徹 - SYNODOS
  • オルタナティブな政治としての市民的抵抗――『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』エリカ・チェノウェス(白水社)/小林綾子(翻訳)国際政治学、紛争平和研究 - SYNODOS

    オルタナティブな政治としての市民的抵抗――『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』エリカ・チェノウェス(白水社) 小林綾子(翻訳)国際政治学、紛争平和研究 政治 はじめに エリカ・チェノウェス[小林綾子訳]『市民的抵抗——非暴力が社会を変える』(白水社、2023年)刊行直後の2023年1月、NHKの番組「100分de名著」〔注1〕で、偶然にも、市民的抵抗研究の父ジーン・シャープの著作が取り上げられた。なぜ市民的抵抗に関心が集まっているのだろうか。 ひとつは、多くの人びとが、従来とは異なる政治参加を考えているからではないだろうか。文だけで350頁にわたる、「厚くて熱い」〔注2〕『市民的抵抗』を読者が読み進める一助となることを願い、以下、翻訳をしながら考えた、「オルタナティブな政治」という視点で書の特徴や課題をまとめる。『市民的抵抗』を引用する場合は括弧で頁数のみ記す。 オルタナティブな政治

    オルタナティブな政治としての市民的抵抗――『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』エリカ・チェノウェス(白水社)/小林綾子(翻訳)国際政治学、紛争平和研究 - SYNODOS
  • トランプ政治再考――進化政治学と自己欺瞞の政治的リーダーシップ/伊藤隆太 - SYNODOS

    はじめに 共和党の大統領候補の指名を受け、ドナルド・トランプ(Donald John Trump)は、「誰も私よりもそのシステムをよく知らない、私だけがシステムを修正できる」と述べた(1)。トランプはバラク・オバマ前大統領(Barack Hussein Obama II)がアメリカ生まれではないと批判して、人種差別的なプロパガンダを広め、世界の覇権国の最高権力を掌握するに至った。詐欺の疑惑や度重なる破産にもかかわらず、アプレンティス(The Apprentice)での役柄にみられるよう、自己欺瞞(self-deception)――他者を騙すため、自分自身が過信すること――は彼を成功したビジネスマンとして有名にしたのである(2)。 しかし、なぜこうした嘘は現実からの明白な乖離にもかかわらず成功するのだろうか。『なぜリーダーは嘘をつくのか――国際政治で使われる5つの「戦略的なウソ」』において、

    トランプ政治再考――進化政治学と自己欺瞞の政治的リーダーシップ/伊藤隆太 - SYNODOS
  • 個人化時代の労働観――データで読みとく「互恵的義務の消失」と意識の世代変化/米田幸弘 - SYNODOS

    「職場の若者とどう付き合えばよいのか」「どうすれば若者に辞めずに働いてもらえるのか」「どうすれば今時の若手社員はうまく育つのか」・・・職場で若者との接し方に悩んでいる人は多いことだろう。年長者と若者との間にある価値観のギャップは古くから問題になってきた。このギャップが生じる原因には、大きく分けて2つのパターンがある。1つ目は、加齢によって価値観が変化したためにギャップが生じる可能性である(=加齢効果)。年齢とともに経験を積むことで、社会性が身につくこともあれば、考え方が保守化することもある。「今時の若者は・・・」とグチをこぼしている中高年も、かつては今の若者と似たようなものだったのかもしれない。 2つ目は、加齢によっても変わらない世代特有の価値観というものがあり、それが「世代間ギャップ」を生むという可能性である(=世代効果)。これは、人格形成期にどのような時代を過ごしたかによって、各世代が

    個人化時代の労働観――データで読みとく「互恵的義務の消失」と意識の世代変化/米田幸弘 - SYNODOS
  • 「相対的な安全保障観」を鍛えるために――演繹的安全保障観と現実の「ずれ」をうめるための読書術(書評)/藤重博美 - SYNODOS

    「相対的な安全保障観」を鍛えるために――演繹的安全保障観と現実の「ずれ」をうめるための読書術(書評) 藤重博美 安全保障研究・平和構築研究 政治 #安全保障をみるプリズム 「安全保障」を論じることは容易ではない。言葉自体が持つ多義性ゆえである。これは英語securityを訳したものだが、基的には「危険や脅威がない状態(Oxford English Dictionary電子版)」を指す。だが、より正確にいうと「危険や脅威によってもたらされる不安を感じない(心の)状態」のことだ。 たとえば、今まさに隣国に攻め込まれようとしているのだとしても、これに不安を感じないのであれば、安全保障は脅かされてはいない。逆もしかり。この点、類語である「安全(safety)」が、より物理的な意味で危害が及ばない状態を指すのとはニュアンスが異なる。 例を挙げよう。米国の軍事力は、物質的には誰がみようと変わりない

    「相対的な安全保障観」を鍛えるために――演繹的安全保障観と現実の「ずれ」をうめるための読書術(書評)/藤重博美 - SYNODOS
  • 「捏造」という言葉の重さについて――批判の自由か《排除》か/志田陽子 - SYNODOS

    近年、「捏造」(ないし「ねつ造」)という言葉によって研究者や文筆家を論難する発言が見られる。こうした発言を名誉毀損に問う裁判も起きている。ジャーナリスト・植村隆氏が提起した二つの裁判(2019年6月26日東京地裁判決・東京高裁で控訴審係争中、2020年2月6日札幌高裁判決、最高裁に上告手続き中)や、研究者グループが提起した「フェミ科研費裁判」(2019年2月12日提訴・係争中)などである。この問題で、「表現の自由」を確保するための解釈はどうあるべきだろうか。 以下は2月24日に行われたシンポジウム「フェミ科研費裁判から考える「表現の自由」と「学問の自由」」(於 同志社大学)での登壇報告をもとにまとめた論考です。質問は、司会者の問いかけや質疑応答でいただいた質問を参考に、筆者(志田)のほうで再構成しています。 ――近年、大学所属の研究者が「捏造」「剽窃」などの研究不正に問われる事例が増えてい

    「捏造」という言葉の重さについて――批判の自由か《排除》か/志田陽子 - SYNODOS
  • 新型コロナ感染症は「近代の終わり」を促すか?/岡本裕一朗 - SYNODOS

    2020年初め、中国の武漢で始まった(とされる)新型コロナ感染症は、瞬く間に世界的な流行となり、3月以降には多くの国々で非常事態宣言を出すまでになった。しかし、5月になると、感染の終息傾向が見えだしたこともあり、宣言は次第に解除され、世界的にも日常生活が戻りつつある。この後、何事もなかったように、以前と同じ世界が始まるのだろうか。それとも、「ポストコロナの世界」は、今までとはまったく違ったものとなるのだろうか。 もちろん、今回の感染症は、あくまで第1波であって、第2・3波が予想されている。また、ワクチンや有効な治療薬の開発も関係してくるので、今のところ確定的なことは言えないだろう。死者の数からいって、過大評価・過剰対策すべきでないという意見だってある。もしかしたら、たんなる一時的な現象で、けっきょくは何も変わらなかった、ということになるかもしれない。したがって、「ポストコロナの世界」を語る

    新型コロナ感染症は「近代の終わり」を促すか?/岡本裕一朗 - SYNODOS
  • なぜ日本に社会民主主義は根付かないのか?/近藤康史 - SYNODOS

    筆者は以前に、『深まる社会民主主義のジレンマ』というタイトルで、近年のヨーロッパ各国における社会民主主義政党の状況について考える論考を寄稿した(2019年3月26日公開)。今回はそこでの議論も踏まえ、その続編として「日における社会民主主義」について考えてみたい。 現在において「日の社会民主主義」を考える場合、まず思いつくのは、かつての日社会党の系譜を受け継ぐ社会民主党の存在であろう。しかし直近の参議院選挙(2019年7月)で社会民主党は比例区にて得票率2.09%で、かろうじて1議席を獲得するにとどまった。この選挙で話題となったれいわ新撰組と比べても得票数は半分以下である。また、同じく話題となったNHKから国民を守る会を、比例区ではかろうじて上回ったものの、その差は6万票程度、得票率にして0.12%の差であった。 もちろん、社会民主党だけが社会民主主義を体現する政党というわけではないだ

    なぜ日本に社会民主主義は根付かないのか?/近藤康史 - SYNODOS
  • めんどうな自由、お仕着せの幸福――サンスティーン先生、熟議のお時間です!/那須耕介 - SYNODOS

    『ナッジ!? 自由でおせっかいなリバタリアン・パターナリズム』の編者である法哲学者の那須耕介さんが、ナッジやリバタリアン・パターナリズムをめぐって、同時代の気になる方々と繰り広げた対話連載がスタートします。まずは、ホスト役の那須さんが、自身の「問題意識」を語りました。いま、このややこしい時代だからこそ話ししてみたいと考えたのはなぜなのか、ちょっと意味深なタイトルの意味を含めて、はじまりはじまり――。(勁草書房編集部) 理不尽な拘束や抑圧を被らないこと、十分な選択肢が与えられていること。昔ながらの「自由」は、いまも私たちの暮らしになくてはならない価値ですが、ともすればこれを恩恵どころか重荷に感じる機会が増えてきたような気がします。 私の自由には、やっかいな自己責任がともないます。膨大な選択肢から選ぶこと自体わずらわしいのに、失敗したら一人では負いきれない代償を求められるなんて、割に合わない気

    めんどうな自由、お仕着せの幸福――サンスティーン先生、熟議のお時間です!/那須耕介 - SYNODOS
  • 誤解だらけの「日米地位協定」/山本章子 - SYNODOS

    在日米軍が事故や犯罪を起こすとニュースに登場する日米地位協定。名称は聞いたことがあるけれど内容はよく知らない、という人が多いのではないでしょうか。まして、協定の条文そのものを見たことがある人は、そんなに多くはないでしょう。でも、どうも問題があるようだ、そう思っている人は少なくないはずです。 日米地位協定の問題が日全国で広く共有されるようになったのは、1995年以降のことです。意外と最近ですね。 きっかけは沖縄で起きた事件でした。米兵三人が沖縄の商店街で12歳の小学生一人を拉致し、人気のない海岸まで連れていき、レイプしたのです。三人は拘束されましたが、米軍が身柄を確保し、起訴するまでは日の警察に引き渡さないという態度をとります。米軍は沖縄県警による三人の取り調べにも非協力的でした。 日国内で起きた日人が被害者の犯罪で、どうして被疑者の身柄確保も通常の取り調べもできないのか。日米地位協

    誤解だらけの「日米地位協定」/山本章子 - SYNODOS
  • 非常事態下の自宅での過ごし方――ヨーロッパの人々の行動や価値観の変化/穂鷹知美 - SYNODOS

    ヨーロッパ諸国がロックダウンをはじめてから、5週間あるいはそれ以上がたちました。ドイツ語圏では4月下旬から、営業を禁止されていた店舗の営業を認めるロックダウン解除の方針が相次いで発表されましたが、基的に用事がない限りほかの人と接触せずに家ですごすべき、という原則は変わっていません。人々はそんななか日々をどんな風にすごしてる、あるいはこれまですごしていたのでしょう。 医療や品や生活必需品に関わる小売や物流関係者、警察など、「社会システムの維持に直結する」と言われる職種の人たちは、就業が義務あるいは認められ、通常以上に多忙な業務に追われています。その一方、現在、仕事ができない人や、ホームオフィスを強いられている人も多々います。その人たちは、1ヶ月以上家にいてなにをしているのでしょう。 みんな家にとじこもっている状況なので、実際のところはよくわかりません。一方で、消費の動向やインターネットに

    非常事態下の自宅での過ごし方――ヨーロッパの人々の行動や価値観の変化/穂鷹知美 - SYNODOS
  • コロナウイルス禍が照らし出す国民国家の弱さ/池田嘉郎 - SYNODOS

    コロナウイルスが世界を席巻するなかで、この災禍が国家や社会のあり方にどのような影響を与えているのかについて、色々な意見が出されている。多くの論者は、このコロナ禍によってグローバリズムの理念が大きく後退し、かわりに国民国家が再浮上したと指摘している(たとえば、Gideon Rachman, “Nationalism is a side effect of coronavirus”, Financial Times電子版、3月23日付け;ギデオン・ラックマン「大流行の危ない副作用」、『日経済新聞』3月30日付け)。たしかにヨーロッパでは、コロナ対策におけるEUの役割はよく見えず、個々の国家が前面に出ている。それ以外の地域でも、国家が対策の中心にいることは間違いない。 だが、私は、国民国家の再浮上と留保なしにいうことにはためらいがある。まず、より適切な用語はないのだろうか。イスラエルの一論者は

    コロナウイルス禍が照らし出す国民国家の弱さ/池田嘉郎 - SYNODOS
  • 「表現の自由」のための自律――緊急事態宣言と「集会の自由」/志田陽子 - SYNODOS

    この原稿を執筆している最中の4月6日夕方に、「明日(4月7日)、緊急事態宣言を発令する」との発表があった。今、世界中が新型コロナウィルスによる感染症と戦わねばならない状態に陥っている。残念ながら、この戦いには、この地上に生きる人すべてが、好むと好まざるとにかかわらず巻き込まれている。 緊急事態宣言が発令されると、都道府県知事は、以下の措置をとることができるようになる(主なものを挙げる)。 ・住民に、外出自粛を要請 ・学校や福祉施設などに、使用停止を要請・指示 ・人が集まるイベント(音楽やスポーツなど)の開催制限の要請・指示 ・臨時医療施設のための土地や建物の強制使用 ・医療用品やマスク品の買い上げ(売り渡し要請)や、収用、保管命令 ・鉄道や運送事業者に、緊急物資(医藥品など)の輸送を要請・指示 ・予防接種の実施の指示(これは有効な予防接種が確立された後の話になる) 筆者は、感染症そのも

    「表現の自由」のための自律――緊急事態宣言と「集会の自由」/志田陽子 - SYNODOS
  • 「ネットは社会を分断しない」? ―― 楽観論を反駁する/辻大介 - SYNODOS

    年1月末、イギリスはついにEUを離脱した。だが、それをめぐって二分された世論の溝は、そう簡単に埋まりそうにはない。ふたたび大統領選挙を迎えるアメリカでも、共和党と民主党の、あるいは保守とリベラルの激しい反目が続いている。トランプ大統領が一般教書演説をおこなった直後、そのスピーチ原稿をびりびり破り捨ててみせたペロシ下院議長のパフォーマンスは、そのことを端的に象徴していよう。 日でも安倍政権シンパとアンチの対立には、これまでになかった根深さが感じられる。たとえば近い将来、憲法改正の国民投票が現実のものとなったとき、はたして私たちは、今のアメリカやイギリスにみられるような社会・世論の「分断」状況を避けることができるだろうか? その意味で、この問題は私たちにとっても決して対岸の火事ではない。 題に入ろう。ネットが、こうした社会や世論の「分断」をもたらす要因のひとつになっているのではないか、と

    「ネットは社会を分断しない」? ―― 楽観論を反駁する/辻大介 - SYNODOS
  • ネットは社会を分断しない――ネット草創期の人々の期待は実現しつつある/田中辰雄 - SYNODOS

    インターネット草創期の人々は、ネットは人々の相互理解を進め、世の中を良くすると期待していた。時間と空間を超えて多くの人が意見交換すれば、無知と偏見が解消され、世界はよくなっていくだろう、と。しかし、今日、ネットで我々が目にするのは、罵倒と中傷ばかりの荒れ果てた世界である。相互理解に資する建設的な会話はほとんど見られない。ネトウヨ、パヨクという侮蔑語が示すように、人々は相反する二つの陣営に分断され、果てしなく攻撃しあっているように見える。 ネットとはそういうものだという、あきらめに似た見解もひろがってきた。人間にはもともと自分と似た考えの人や記事を選ぶ傾向があり、それは「選択的接触」と呼ばれている。ネットでは情報の取捨選択が自由にできるため、この選択的接触が非常に強まる。自分と同じ意見の人をツイッターでフォローし、フェイスブックで友人になり、自分と似た見解のブログを読めば、接する情報は自分の

    ネットは社会を分断しない――ネット草創期の人々の期待は実現しつつある/田中辰雄 - SYNODOS
  • 「不自由展」をめぐるネット右派の論理と背理――アートとサブカルとの対立をめぐって/伊藤昌亮 - SYNODOS

    2019年8月、「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が右派からの抗議を受け、中止に追い込まれるなか、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のキャラクターデザインなどで知られるクリエーターの貞義行が発したツイートが物議をかもし、炎上するという一幕があった。 「キッタネー少女像。/天皇の写真を燃やした後、足でふみつけるムービー。/かの国のプロパガンダ風習/まるパク!」などというその発言には、リベラル派からの激しい批判を中心に、千件を超えるリプライが付けられる一方で、右派からは続々と賛意が寄せられ、2万件近くもの「いいね」が付けられた。そうしたなか、貞は釈明のツイートを投じていったが、するとそれに受けて5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)には関連するスレッドが立てられ、その援護が試みられた。 「不自由展」の検証委員会によれば今回の騒動は、「電凸」などによる抗議が「祭り」に転

    「不自由展」をめぐるネット右派の論理と背理――アートとサブカルとの対立をめぐって/伊藤昌亮 - SYNODOS
  • 移民受け入れと社会的統合のリアリティ――現代日本における移民の階層的地位と社会学的課題/是川夕 - SYNODOS

    われわれの社会がすでに移民受け入れ社会となっているという事実は、最近頻繁に指摘されるようになってきているので、驚く人は少なくなっているかもしれない。しかし同時に、現代の日において、移民の社会的統合が緩やかに進みつつあると言ったならば、多くの人はにわかに信じがたいのではないだろうか。 拙著『移民受け入れと社会的統合のリアリティ』(勁草書房)は、国勢調査のマイクロデータという、現時点でもっとも信頼しうるデータをもとに、ナショナルレベルで見た移民の社会的統合の現状について定量的に分析したおそらく初めての研究であり、上記の結論もその中で見えてきたものである。この結論は筆者である私にとっても、当初信じがたいものでありこの結論に至るまでにずいぶんと逡巡を重ねた。 以下ではそのポイントを紹介したい。なお、書で言及する移民とはデータの制約上、外国籍人口のことを指している。 日はすでに移民受入社会であ

    移民受け入れと社会的統合のリアリティ――現代日本における移民の階層的地位と社会学的課題/是川夕 - SYNODOS
  • 「趣味の歴史修正主義」を憂う/大木毅 - SYNODOS

    拙著『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)を上梓してから、およそ3 か月になる。幸い、ドイツ史やロシア・ソ連史の専門家、また一般の読書人からも、独ソ戦について知ろうとするとき、まずひもとくべき書であるという過分の評価をいただき、非常に嬉しく思っている。それこそ、まさに『独ソ戦』執筆の目的とし、努力したところであるからだ。 残念ながら、日では、ヨーロッパにおける第二次世界大戦の展開について、30 年、場合によっては半世紀近く前の認識がまかり通ってきた。日のアカデミズムが軍事や戦史を扱わず、学問的なアプローチによる研究が進まなかったこと、また、この間の翻訳出版をめぐる状況の悪化から、外国のしかるべき文献の刊行が困難となったことなどが、こうしたタイムラグにつながったと考えられる。もし拙著が、そのような現状に一石を投じることができたのなら、喜ばしいかぎりである。 しかし、上のような事情から、日

    「趣味の歴史修正主義」を憂う/大木毅 - SYNODOS
  • 西欧社会民主主義はなぜ衰退しているのか?/吉田徹 - SYNODOS

    ポピュリズム伸長と社民の衰退 西欧各国の社民政党が大きなダメージを受けている。 2017年から2018年は、英EU離脱と米トランプ大統領誕生があったこともあり、西ヨーロッパ各国での選挙が大きな注目を浴びた。オーストリアやイタリアではポピュリスト政党が参画する連立政権が発足したが、フランスといった欧州の中核国ではポピュリスト勢力は政権の座から遠ざけられ、グローバルなポピュリズム・ドミノは押しとどめられたようにもみえる。 もっとも、これまでの各国選挙の推移を注意深くみれば、留意すべきはポピュリズム政党の伸長以上に、各国政治で中心的な役割を占めていた社民政党の決定的な衰退である。 まず、2017年3月のオランダ総選挙では、与党・労働党がわずか9議席(改選前38議席)という、歴史的敗北を喫した。1980年代から90年代にかけ、同党は中道右派政党のキリスト教民主アピールとともに2大政党のひとつだった

    西欧社会民主主義はなぜ衰退しているのか?/吉田徹 - SYNODOS
  • パートナーに求めるものは財産、若さ、知能、それとも家事能力?――男女同権がパートナー選びや社会にもたらす影響/穂鷹知美 - SYNODOS

    パートナーに求めるものは財産、若さ、知能、それとも家事能力?――男女同権がパートナー選びや社会にもたらす影響 穂鷹知美 異文化間コミュニケーション 国際 #「新しいリベラル」を構想するために みなさんがパートナー選びで重視するのはどんなことでしょう。財産、若さ、知能、容姿、それとも家事能力でしょうか。 近年、ドイツ語圏では、パートナー選びを社会の男女同権の進展と関連づけて説明する見解が、たびたびメディアで取り上げられます。男女同権は社会的な権利や枠組みですが、それがパートナー選びというきわめて個人的な問題、異性のどこに魅力を感じるかという生理的な問題に、当に関係しているのでしょうか。 今回は、この見解が広く注目されるきっかけとなった2015年に発表された論文(Zentner /Eagly, 2015)をもとに、パートナー選びの新しい傾向をご紹介してみたいと思います。 男女同権の進展度は国

    パートナーに求めるものは財産、若さ、知能、それとも家事能力?――男女同権がパートナー選びや社会にもたらす影響/穂鷹知美 - SYNODOS