人はミステリアスなものに惹かれる性質がある。ぱっと見ただけでおおむねわかってしまうようななにかについて、それ以上あえて追求する意欲はあまり起こらないものであり、われわれもやはり同様に、底知れなさ感、謎めき感などを演出していった方がおもしろいのではないか、とわたしはおもう。 たとえば映画の予告編をおもいだしてほしい。たいていは、それがどういう映画なのかについて、ひとまずの概要は伝えながらも、もちろん核心には触れていないし、おもわせぶりな映像やシーンだけを効果的につないでいくことで、あたかもそこにはすごい興奮があるかのような予告をしている。仮に映画がひどい駄作であったとしてもかまわない。それがどうにか演出し、できるだけおもしろそうに編集する。卑怯かもしれないが、予告編とはそういうものである。 では、われわれにとっての予告編、つまりは「あたしの予告編」「僕の予告編」といったものが存在するとすれば