ネットサーフィンをしていると古いドキュメンタリー番組に行き当たった。 それは東京のどこか見窄らしい町の一角を舞台にしたドキュメンタリーで、高校の時にいじめられて引きこもり、酒浸りでアル中になった初老の男が町に出て働くという番組だった。男は虚ろな目で番組のスタッフに焼酎をねだり、4リットルはあろうかという巨大な焼酎のペットボトルと、空っぽの一升瓶に囲まれて暮らしていた。父親は幼い頃に死んでおり、その位牌や遺影それらを納めていた少し高そうな木製の棚は、酔った男の火の不始末により真っ黒に焼け焦げている。生活の糧は明日にも死のうかという瀕死の老婆の僅かな年金。 その年金が老婆の手によって郵便局から引き出されると、アル中の男とは違う理由で足元の定まらない腰の曲がった今にも倒れそうな年老いた老婆は、年老いてなお衰えぬはっきりした勇敢な意識だけをたよりに東京のどこかで古くから忘れられた見窄らしい町を颯爽