0、問題設定 『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズは二〇〇〇年代のなかばにおいて「No.1ライトノベル」(角川スニーカー文庫の一時期のキャッチコピー)のひとつだった。象徴的な意味でも、商業的な意味でも。 現在のライトノベル市場でヒットが期待できる作品形態とくらべてみたとき、爆発的なヒットをした『ハルヒ』は――過去のものだ。 『ハルヒ』は、閉鎖された異空間で巨大カマドウマと戦うことや野球の試合をすることはあれど、バトルをメインにした作品ではない。ファンタジーでもないし、ゲームものでもない。 作中に登場する女性キャラ・涼宮ハルヒや長門有希、「朝比奈さん(大)」こと未来から来た大人っぽい外見をした朝比奈みくるから主人公のキョンは好意を寄せられているふしはみられるが、しかし、全女性キャラから主人公の男が言い寄られまくるようなラブコメでもない。かといって男女の想いのすれ違いを描き、恋愛模様を中心にした作品で