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  • 「正常な忘却」は決して悪いことではない──『忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか』 - 基本読書

    忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか 作者:スコット・A・スモール白揚社Amazon的に記憶力が良いことはこの社会を生き延びていくにあたって「良い」ことだとされている。記憶力を高めたいと思わない人がいるだろうか? 認知症でもないのに忘れっぽかったり覚えが悪かったりすると、心配されることもあるだろう。しかし、「忘却する」ことは脳にあらかじめ用意されている、とても有益な機能でもある。 書『忘却の効用』はコロンビア大学の神経精神科学教授であるスコット・モールが、忘却の利点について解説した一冊だ。記憶力が良い人、何もかも忘れない人(時折、そういう人がいるのだ)にも良い点はあるが、そうであるがゆえのデメリットも存在する。僕も人に呆れられるほど忘れっぽい方で、もう少し記憶力がよければなあと思う局面も多い(たとえばトークイベントで昔読んだの話をしようとしても全然内容を思い出せないと

    「正常な忘却」は決して悪いことではない──『忘却の効用: 「忘れること」で脳は何を得るのか』 - 基本読書
  • ホームズがクトゥルーの古き神々と遭遇する大胆不敵なマッシュアップ──『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』 - 基本読書

    シャーロック・ホームズとシャドウェルの影 (ハヤカワ文庫FT) 作者:ジェイムズ ラヴグローヴ早川書房Amazon映画も含めたシャーロック・ホームズ関連作品はコナン・ドイルによる正典の他に数多くのパスティーシュ、クロスオーバー、二次創作で溢れかえっているが、その流れに新たに連なっているのが『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』だ。ラブクラフトによって打ち立てられた巨大な世界「クトゥルフ神話」、そしてそこに現れる古き神々とホームズが出会う様を描き出す、大胆不敵なマッシュアップである。 ホームズの持ち味といえばその鋭い観察眼と明快なロジック、腕っぷしが必要になるときはバリツによって事件を解決に導いていくところにあるが、クトゥルーの神々には当然ながらロジックもバリツも通じない。理屈が通じない神々と出会った時、ホームズとワトソンはどのような反応を返すのか──!? と、正直座組を聞いた段階でワ

    ホームズがクトゥルーの古き神々と遭遇する大胆不敵なマッシュアップ──『シャーロック・ホームズとシャドウェルの影』 - 基本読書
    natutoyuuki
    natutoyuuki 2022/08/28
    いいこと考えた。クトゥルー、ホームズ、ニンジャ、ゴジラ。こいつらを同時に出した物語を作れば最強なのでは?
  • 頭の中で、日々どのような対話が行われているのか?──『おしゃべりな脳の研究――内言・聴声・対話的思考』 - 基本読書

    おしゃべりな脳の研究――内言・聴声・対話的思考 作者:チャールズ・ファニーハフみすず書房Amazon多かれ少なかれ、誰もが「頭の中での対話」をしたことがあるはずだ。明日何べようかな〜という問いかけ・対話を通して答えを導き出そうとする対話的思考から、なにかにチャレンジする時に「お前はできるお前はできるお前はできる」と自己暗示のように自分に語りかけることもあるだろう。物語を読んでいるときは、登場人物の声が頭の中で反響している人もいるはずだし、作家ならばなおのことそうだろう。 書『おしゃべりな脳の研究』は、そうした頭の中で鳴り響く声、セルフトークについて書かれた一冊だ。誰もが似たようなことは経験しているとはいえ、それはあくまでも主観的な体験であり、その内実はみな大きく異なっている。内なる言葉が明確に言語化可能な人もいれば、逆にぼんやりとしたイメージのようなものでで言語化不可能な人もいる。内言

    頭の中で、日々どのような対話が行われているのか?──『おしゃべりな脳の研究――内言・聴声・対話的思考』 - 基本読書
    natutoyuuki
    natutoyuuki 2022/04/19
    キャンディーの中にオンディー
  • 現代人必読の仕事論『ブルシット・ジョブ』から基礎研究の重要性を問い直す『「役に立たない」科学が役に立つ』まで色々紹介!(本の雑誌2020年10月号掲載) - 基本読書

    まえがき の雑誌2020年10月号掲載の原稿を転載します。『ブルシット・ジョブ』に『言語の起源』にと大作目白押し。『「役に立たない」科学が役に立つ』も短いながらも現代においては重要な観点を持っているで短くもずっしりと重い。 完全に個人的な趣味だけど『押井守の映画50年50』は押井守の映画語りの中では一番好きといってもいいだし、山貴光『マルジナリアでつかまえて』はに書き込みを入れることについてので、僕もめちゃくちゃに書き込みを入れる勢なので共感しきりだった。このはブログでも書けなかったのでもっと書きたかったな。 ここから原稿 ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論 作者:デヴィッド グレーバー発売日: 2020/12/24メディア: Kindle書が邦訳された直後に亡くなってしまったこともあって話題となったデヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ クソどう

    現代人必読の仕事論『ブルシット・ジョブ』から基礎研究の重要性を問い直す『「役に立たない」科学が役に立つ』まで色々紹介!(本の雑誌2020年10月号掲載) - 基本読書
  • どのようにして世界について考えるべきか──『哲学の技法: 世界の見方を変える思想の歴史』 - 基本読書

    哲学の技法: 世界の見方を変える思想の歴史 作者:ジュリアン・バジーニ発売日: 2020/02/11メディア: 単行この『哲学の技法』は英国の哲学者兼哲学系著述家であるジュリアン・バジーニによる、西洋をはじめとして、東洋やインド哲学が世界をどのようにしてみているのか、その違いはどこにあるのかを紹介していく、比較哲学といったおもむきのである。 西洋哲学の識者が東洋やインド哲学を学んでみました! というだと、章ごとに日はこうで、中国はこうで、インドはこうで、と国ごとに分かれている構成が最初に思いつくはずだが、書の構成は「洞察」、「時間」、「カルマ」、「言葉にできないこと」と哲学でよく問われるテーマごとに、「西洋ではこう、東洋ではこう、インドではこう」とすべての哲学&宗教がごたまぜにして語られているのがおもしろい。 まそうした地域の哲学の違いに注目するだけではなく、固有の哲学が、その地

    どのようにして世界について考えるべきか──『哲学の技法: 世界の見方を変える思想の歴史』 - 基本読書
  • ハヤカワの1000作品が最大50%割引の超大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する!! - 基本読書

    三体 作者:劉 慈欣発売日: 2019/07/04メディア: Kindle版うおおおコロナで外に出る理由もない今日この頃、突如として早川書房から1000作品が最大50%割引の超大型電子書籍セールをはじめたのでオススメを紹介します!! 早川は毎年、海外SFだったり日SFだったりと、わりとテーマを絞った数十〜数百点規模のセールはやっていたのだけど、垣根がなくここまで大規模のセールははじめてでは!? 早川といえばSFとミステリと科学ノンフィクションなので、そこらへんを重点的に紹介してみようかと思いやす。ちなみにセール商品全点は下記の通り。 www.amazon.co.jp SF篇 まず「これは当然だよなあ?」レベルの王道から行くと、なんといっても劉慈欣の『三体』だ! 識者らがアンケート形式で投票し、その得票数でランキングを決める「SFが読みたい!」というムックのランキングで2位を大きく突き放し

    ハヤカワの1000作品が最大50%割引の超大型電子書籍セールがきたのでオススメを紹介する!! - 基本読書
  • Kindle読み上げでたくさん本を読む - 基本読書

    この何ヶ月かKindle読み上げを利用してけっこうな冊数を読んでいて、なかなかいいぞとかこれは難しいぞという知見が貯まってきたのでここらでいったん共有したい。Kindle読み上げとは何なのかといえば、Kindleのアプリケーションに存在する読み上げ機能を使って音声でを読むというただそれだけのことであり、別に特段のスキルも準備も必要ない(最低限スマホかタブレットは欲しいところだけれども)。設定方法については面倒なのでこの記事では解説しない。Kindle読み上げで検索スべし。 katsumakazuyo.hatenablog.com この記事では方法よりも「そもそもどんなが読み上げに向いているのか?」とかの使用感を中心にしていこうと思う。僕自身も人がやっている(勝間和代さんとか)のを見かけてやってみたのだけれども、正直最初は半信半疑であった。ていうか音声で聞いてたら読み終えるのに時間かか

    Kindle読み上げでたくさん本を読む - 基本読書
  • 人間を超えた存在になりたいと願う人々──『バイオハッキング―テクノロジーで知覚を拡張する』 - 基本読書

    バイオハッキング―テクノロジーで知覚を拡張する 作者: カーラ・プラトーニ,田沢恭子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2018/11/08メディア: 単行この商品を含むブログを見るこのを読むまで僕もまったく知らなかったのだが、世の中にはバイオハッカー、グラインダーと呼ばれるアマチュア科学者からなる探索コミュニティーが存在しているらしい。彼らは電気工学を得意とする一派で、自分たちの身体を拡張するために”バイオハック”する。たとえば、磁石を身体の中に埋め込むとかして。磁石を身体に入れてどうすんねん、と思うが、手にコインがくっついたりしたら宴会芸的におもしろいし、磁石を身体に入れた人たちがいうには、磁気を感じ取れるようになるらしい。 書は、そうしたバイオハッカーたちの企みや考え方を追うと同時に、人間が持つ各種の近く──視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚がどのようにして生じており、現在それを拡張

    人間を超えた存在になりたいと願う人々──『バイオハッキング―テクノロジーで知覚を拡張する』 - 基本読書
  • 音が支配する世界を描くディストピア音楽文学──『鐘は歌う』 - 基本読書

    鐘は歌う 作者: アンナ・スメイル,山田順子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/11/21メディア: 単行この商品を含むブログを見る『鐘は歌う』は、〈大崩壊〉によってロンドンの橋という橋が落ち、人々の目はみえなくなり鼓膜は破れ、それをきっかけとして書面による言葉の伝達・記憶が封じられた世界を描くディストピア小説だ。街には巨大な楽器であるカリヨンとそれに連動したパイプオルガンが設置されており、日の出と日没時に街中に向かって配信される、調和を目指した歌を歌い、一種の共同洗脳状態へと陥っていくことになる。 朝課には、組み鐘は澄んだ音をやわらかく響かせ、一体化を説く──静かに、やさしく。カリヨンの一体化ストーリーは交唱形式で、質問には回答を、呼びかけには応答を求める。ぼくたちの声は、カリヨンに与えられるメロディをなぞる。カリヨンの問いに、ぼくたちは正しい回答を返す。つねに同じ、つね

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  • もしもヴァンパイアが大英帝国を統治したら──『ドラキュラ紀元一八八八』 - 基本読書

    ドラキュラ紀元一八八八 作者: キム・ニューマン,鍛治靖子出版社/メーカー: 書苑新社発売日: 2018/05/11メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見るキム・ニューマン『ドラキュラ紀元一八八八』は東京創元社の『ドラキュラ紀元』の増補&改訳版。映画シナリオや世界観を補完する短篇が収録され、完全版といえる出来。もともと読んだことがなく値段が4000円近くするなのでおもしろくあってくれ! と祈りながら読んだのだけど、これがもうめちゃくちゃおもしろい! 台詞の一つ一つが痺れるほどにカッコよく、無尽蔵に投入されるフィクション&歴史上のキャラクタが織りなす1888年の改変世界はどこに目をやっても魅力が横溢している。 原典たる『吸血鬼ドラキュラ』では、吸血鬼であるドラキュラをヴァン・ヘルシングが追い詰め殺してしまうわけだが、この『ドラキュラ紀元一八八八』世界では逆に

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  • 日本合衆国の軍パイロットとして、メカを駆ってナチスをぶっ飛ばす!──『メカ・サムライ・エンパイア』 - 基本読書

    メカ・サムライ・エンパイア 上 (ハヤカワ文庫SF) 作者: ピーター・トライアス,John Liberto,中原尚哉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/04/18メディア: 文庫この商品を含むブログを見るメカ・サムライ・エンパイア 下 (ハヤカワ文庫SF) 作者: ピーター・トライアス,中原尚哉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/04/18メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る第二次世界大戦で枢軸側が勝利し、日合衆国が爆誕。しかも日合衆国はメカと呼ばれる巨大ロボ部隊を生み出しており──と滅茶苦茶キャッチーなあらすじと表紙で2016年の話題をかっさらっていった『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』の続篇がこの『メカ・サムライ・エンパイア』である! 珍しいことに、英語版の発売に先駆けてこの翻訳・日語版がでているので、気合の入りようが違う。 そ

    日本合衆国の軍パイロットとして、メカを駆ってナチスをぶっ飛ばす!──『メカ・サムライ・エンパイア』 - 基本読書
    natutoyuuki
    natutoyuuki 2018/04/21
    マジ歌選手権でこんな歌詞聞いたことある
  • 現代の考古学を古代に書かれたものと組み合わせる──『先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学』 - 基本読書

    先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学 作者: メアリー・セットガスト,山貴光,吉川浩満出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2018/04/08メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る書名からだけではよくわからないだ。『先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学』というのは、普段ならまず手に取らないだが、先日高野秀行さんと清水克行さんの対談『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』のトークイベントに行ったら、そこで司会をしていたHONZ編集長にオススメされた(編集長も別に読んでいたわけではないが)ので、それなら読まないわけにはいかない。 惚れ惚れするようにあやしい で、読んでみたのだが、これが惚れ惚れするようにあやしいだ。何しろ、内容的にはプラトンの著作の中でも主に『ティマイオス』と『クリティアス』を取り上げてい

    現代の考古学を古代に書かれたものと組み合わせる──『先史学者プラトン 紀元前一万年―五千年の神話と考古学』 - 基本読書
  • わたしたち人間はなぜ音楽を愛するのか?──『ドビュッシーはワインを美味にするか? 音楽の心理学』 - 基本読書

    ドビュッシーはワインを美味にするか?――音楽の心理学 作者: ジョンパウエル,濱野大道出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/11/07メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る人間は音楽を聞く。通勤、通学のときはもちろん、家でゆっくりしているとき、みんなで盛り上がるとき、つらいことがあったとき、無理矢理にでもテンションを上げたいとき、退屈な作業をしているとき。我々はさまざまなシーン、用途にたいして音楽を聞いているわけだけれども、あらためて考えてみると「果たしてそれはどのように機能しているのか?」「なぜそれは機能するのか?」「音楽にはどれだけの影響力があるのか?」「人間はなぜ音楽を愛するのか?」など不思議なことが数多くある。 わたしたち人間はなぜ音楽を愛するのか? それは音楽を聴くことが、脳に適度な刺激を与え、同時に喜びを与えてくれる最良の方法だからだ。サイエンス

    わたしたち人間はなぜ音楽を愛するのか?──『ドビュッシーはワインを美味にするか? 音楽の心理学』 - 基本読書
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