江戸時代末期、多くの殿様たちは、260年以上続いた江戸幕府が、まさかあっけなく崩壊するとは夢にも思っていなかっただろう。 それまで統治者だった殿様たちの中には、領地も家臣も取り上げられ、新天地への移住を余儀なくされた殿様や、思わぬ大事件に巻き込まれてお家を取りつぶされたり、新政府に徹底してあらがった殿様もいた。 そんな激動の中に放り込まれた殿様たちについて解説した歴史研究家・河合敦氏の著書『殿様を襲った「明治」の大事件』(扶桑社文庫)。 今回は、改易状態から新天地での開拓に成功した名門仙台藩・亘理(わたり)伊達邦成(くにしげ)が明治の世でどのように翻弄(ほんろう)され、生き抜いたか一部抜粋・再編集して紹介する。(以下「 」内は河合敦氏) 藩の行く末を左右した仙台藩の決断 北海道伊達市。この地の礎をつくったのが、14代当主・伊達邦成なのだ。 亘理伊達家は伊達家の分家で、代々伊達宗家の藩政を補