安倍晋三政権は賃金上昇を目指し経済界へ積極的に働きかけている。生産性の動向から見て賃金上昇は可能なのだろうか。可能とすれば何が必要なのだろうか。 一国全体の労働生産性は、労働時間当たりどれだけ実質国内総生産(GDP)が生産されるかで計測される。労働時間当たり実質GDP(例えば1時間5000円)のうち、時間当たり実質労働コスト分(例えば1時間3000円)が労働に分配される。したがって単純化して言えば、実質賃金の上昇率が労働生産性の上昇率を上回ると、労働分配率(上の例では60%)が上昇していくことになる。 労働分配率の上昇が続けば、資本収益率が下落し設備投資が減退するから、そのような賃金上昇は持続できない。これが賃金上昇を考えるにあたって労働生産性の動向に注目する主な理由である。 ◆◆◆ 表の上段には、1970~2011年をおおよそ10年ごとに区切って、日本経済全体の時間当たり労働コスト(企業