管理会計上の概念に、「埋没原価(サンク・コスト:sunk cost)」というのがあります。経営の意思決定上、大変重要な概念ですが、一般の人には馴染みにくいものです。そこで、設例を使って説明しましょう。 ――●「原価」割れ受注の可否 事業の中には、季節変動が激しい業種もあります。たとえば印刷業もそのひとつです。年末には年賀状や歳末セールのチラシなど印刷需要が膨み、まさに書き入れ時を迎えます。一方、いわゆるニ・八(2月・8月)には、商業印刷の需要も減るので売上は伸びません。 さて、その印刷業を営むA社があります。A社の2月のコスト構成は次のようなものだったと します(印刷枚数60万枚)。 材料費 1,500万円(1枚あたり@25円) 人件費 3,000万円 償却費 1,500万円 6,000万円(製造単価@100円) (なお、月間の印刷能力は人員・設備ともに100万枚で、現状40万枚の余