登場人物たちがよくおしゃべりする小説である。議論とも、日常会話とも違う対話が、出自も考え方も異なる人々を結び付け、それぞれの足元を照らす。多和田葉子さんの新作長編「太陽諸島」(講談社)には、そんな「言葉」を巡る光景が描かれている。人々が孤立し、分断が進む現代社会で言葉が果たす役割とは。刊行に合わせて、ドイツから約2年半ぶりに来日した多和田さんに聞いた。【関雄輔】 コロナ禍で失われた「中間の会話」 本作は、今年の全米図書賞翻訳文学部門の最終候補にもなった「地球にちりばめられて」から始まる3部作の完結編。留学中に日本とおぼしき母国の島国が消え、同郷人を探す旅をヨーロッパ各地で続けてきたHirukoと仲間たちの物語は、本作でバルト海に舞台を移す。船の上で、寄港地で、Hirukoたちは言語や歴史についてのとりとめのない会話を続ける。 多和田さんは「中間の会話」が社会には必要だと言う。「『今日ご飯ど
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