ファッションの楽しみは、まともな=道徳的な「型」と逸脱した「尖り」とのあいだで、一線を越えない冒険「ごっこ」をすることなのだろうか。あるいは、何らかの「法」、ドレスコードに対するギリギリの裏切り「ごっこ」なのだろうか。エロティックな魅力というものは、ルールを破るか破らないかのきわどいところに表れると思われている。ギリギリで「アウト」にならないという美学。何らか「平均的」なライフスタイルへの同調圧力がひじょうに強い日本社会において、ファッションの遊びとは、かなりのところ、広い意味での「着くずし」のバランスの美学であったと思われる。 かつて1980〜90年代には、芸術的というか「芸術っぽい」(artyな)前衛のファッションが大いに活況を呈したが、それも日本においては、たちどころに「制服化」されてしまった(黒一色のカラス族、そして今日「モード系」と言うと、一種のそれっぽいタイプを指すことになって