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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (10)

  • うなぎ絶滅後の世界──『うなぎばか』 - 基本読書

    うなぎばか 作者: 倉田タカシ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/07/04メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (1件) を見る2013年に絶滅危惧種に指定されて以来ニホンウナギがマジでやばいことはだいぶ浸透してきたように思うが、まだまだ土用の丑の日にはそこら中でうなぎを売り、みんながぱくぱくべるという状況には変化がない。おいしいし、何より普通に売っているのだから、べるのも当然だろう。実際、ニホンウナギの個体数の減少が過剰な漁獲にあるのかどうかも現実的にはまだわからない状態である。当はこのままべ続けても絶滅しないのかもしれないし、あっさりと消えてなくなるかもしれない。 土用の丑の日あわせで刊行された倉田タカシ『うなぎばか』は、そんな「もしウナギが絶滅したら……」という未来を描いたポストウナギSFである。ポストウナギSFってなんやねんという感じだが、伊

    うなぎ絶滅後の世界──『うなぎばか』 - 基本読書
  • 人類史に刻み込むべき神シリーズ──『ランス10』 - 基本読書

    ランス10 出版社/メーカー: アリスソフト発売日: 2018/02/23メディア: DVD-ROMこの商品を含むブログ (1件) を見る発売されてから120時間以上プレイし続けてようやくクリアした……というか、”クリアしてしまった”。できることならば永遠に終わらないでほしかった。無限にこの世界で遊んでいたかった。しかし終わるからこそ、そんな気持ちも湧いてくる。 29年間最前線を突き抜けてきたゲーム・シリーズ ランスシリーズの完結作『ランス10』とそのシリーズは、まさにそんな気持ちを抱かせてくれた理想のシリーズ作品だ。平成の元年にはじまって、約30年間にわたって紡がれ続けてきたこの作品は、その年月の中で幾度も形を変えながらもその魂は失われず、”ランスシリーズのおもしろさ”を開拓し続けてきた。『ランス10』はその完結作にふさわしい、超ド級の傑作だ。エンディングをいったん観た今、これほどの楽し

    人類史に刻み込むべき神シリーズ──『ランス10』 - 基本読書
  • ブラックアウト:1940年のイギリスから脱出せよ - 基本読書

    いやはや大変いいものを読ませていただきました。10年に一度クラスのごちそうですよ(コニー・ウィリスの史学部シリーズは、30年で長編が3冊しか出ていない為)。書『ブラックアウト』はSF作家として数々の著名作『航路』『犬は勘定に入れません』『ドゥームズデイ・ブック』などを送り出してきたベテラン作家だが、作を読んでいるとそういう言葉が似合わなく感じる。熟練の技はもちろんのこと、アグレッシブさが過去作よりもどんどん増しているのだ。 それは複雑な構成で歴史を語ろうとする構成からも一目瞭然で──と話をはじめる前に少し概要を。書は『ドゥームズデイ・ブック』『犬は勘定に入れません』に続く、3冊目の「オックスフォード大学史学部タイムトラベル・シリーズ(解説にこうあった)」の前半部分だ。時代はタイムトラベルがある程度実用化されるようになった2060年。史学部の生徒たちは過去の歴史研究を行うため、それぞれ

    ブラックアウト:1940年のイギリスから脱出せよ - 基本読書
  • 少女が蒸気駆動の甲冑機械を着て駆け回る──『スチーム・ガール』 - 基本読書

    スチーム・ガール (創元SF文庫) 作者: エリザベス・ベア,安倍吉俊,赤尾秀子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/10/21メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る「スチーム」ときて「ガール」である。スチームだけでも満貫だが、そこにガールがつけば役満である。ということで『スチーム・ガール』なわけだが、読み始めて気づいたのだが原題は『KAREN MEMORY』で、その書名通りにカレンという名の高級娼館で働く少女が、一連の事件が終わった後に回想形式で語る物語である。 ちなみにスチーム要素もちゃんとある。飛行船から船まで、蒸気駆動の船が世界を闊歩している19世紀後半のアメリカ西海岸の港町が舞台なのだ。ただ、少女が蒸気駆動の甲冑機械を着て駆け回るとか記事のタイトルにつけてしまったし、帯にも「愛する彼女を守るため、カレンは蒸気駆動の甲冑機械を身にまとう」と書いてあるが、

    少女が蒸気駆動の甲冑機械を着て駆け回る──『スチーム・ガール』 - 基本読書
  • きっと、もっと猫が好きになる──『猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』 - 基本読書

    SF傑作選 は宇宙で丸くなる (竹書房文庫) 作者: シオドア・スタージョン,フリッツ・ライバー,他,中村融,旭ハジメ出版社/メーカー: 竹書房発売日: 2017/08/31メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見るSFといえば、犬よりものイメージが強い(犬SFの傑作もたくさんあるけど)。『夏への扉』はもちろん、コードウェイナー・スミスの『鼠と竜のゲーム』、神林長平『敵は海賊』シリーズ、秋山瑞人『の地球儀』など、SFは傑作だらけだ。 というわけで書は書名通りのSF傑作選である。シオドア・スタージュンからフリッツ・ライバー、ロバート・F・ヤングまで10人の作家による10篇のSF短篇が収められている。アンソロジーの特徴としては、スミスの「鼠と竜のゲーム」などド定番の物が一部入っていない代わりに、邦初訳が4篇、それ以外もほとんど入手・読むのが困難だった作品ばかりが揃

    きっと、もっと猫が好きになる──『猫SF傑作選 猫は宇宙で丸くなる』 - 基本読書
    nekoprotocol
    nekoprotocol 2017/09/22
  • 約15万円の講座を圧縮して読めるハイパフォーマンスな一冊──『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』 - 基本読書

    SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録 作者: 大森望,東浩紀,長谷敏司,冲方丁,藤井太洋,宮内悠介,法月綸太郎,新井素子,円城塔,小川一水,山田正紀出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/04/20メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログ (3件) を見る書は東浩紀さん率いるゲンロンで一年間開催されていた、大森望さんによるSF創作講座をまとめた一冊になる。受講料は第一期が148000円、第二期が168000円(税別)となかなかのお値段がするが(とはいえ、物にもよるがこの手の講義からするとお手頃だと思う)、内容の充実度、その場所で副次的に得られるものを考えると安いものだろう。なにしろ、募集開始から枠がすぐに埋まってしまうのだから。 創作講座の充実度。 (ゲンロンの回し者のように見えるとアレだが)SF創作講座から得られるものを率直に考えてみると、まず講

    約15万円の講座を圧縮して読めるハイパフォーマンスな一冊──『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』 - 基本読書
  • ネビュラ賞受賞のファンタジィ──『ドラゴンの塔』 - 基本読書

    ドラゴンの塔 上巻 魔女の娘 作者: ナオミ・ノヴィク,カガヤケイ,那波かおり出版社/メーカー: 静山社発売日: 2016/12/07メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見るドラゴンの塔 下巻 森の秘密 作者: ナオミ・ノヴィク,カガヤケイ,那波かおり出版社/メーカー: 静山社発売日: 2016/12/07メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見るネビュラ賞の長篇部門を、アン・レッキーの『星群艦隊』、ケン・リュウの『蒲公英王朝記』等の話題作と競った末に受賞したのが書『ドラゴンの塔』である。 その時点でめちゃくちゃにハードルが上がっていたのだが、読んでみればハードルを超えてきたとまではいわないものの(他の作品も良いし)なかなかおもしろいファンタジィ小説であった。プロットと世界観自体はシンプルでおとぎ話的であるものの、《テメレア戦記》シリーズの著者らしい瑞々しい

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  • 神を殺す銃──『ゴッド・ガン』 - 基本読書

    ゴッド・ガン (ハヤカワ文庫 SF ヘ) 作者: バリントン・J・ベイリー,大森望,中村融出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/11/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る2016年に『カエアンの聖衣』が新訳、『時間衝突』が新版で出たばかりのベイリーだがそれに続けて日オリジナルの短篇集である書『ゴッド・ガン』まで出てしまった。そこそこ売れたからなのかどうかはともかく、ベイリーの短篇はどれも今読んでもおもしろい上に、破天荒で奇妙な作品が小説でも映像でも増えてきた近年だからこそ、ようやく受け入れられる土壌が世間に育ってきたといえるのかもしれない。 作品選定は訳者の一人でもある大森望さんが行い、全10篇のうち2篇は書のために新訳が起こされている。神を殺せる銃をつくって撃ったらどうなるの? を短篇にしてしまった「ゴッド・ガン」のようにらしい作品もあれば、エルフや

    神を殺す銃──『ゴッド・ガン』 - 基本読書
  • ロボット/電脳刑事物の近未来サスペンス──『ロックイン-統合捜査-』 - 基本読書

    ロックイン-統合捜査- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: ジョンスコルジー,内田昌之出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/02/09メディア: 単行この商品を含むブログ (5件) を見る『レッドスーツ』や『アンドロイドの夢の羊』、《老人と宇宙》シリーズで知られるジョン・スコルジーの新刊である。新☆ハヤカワ・SF・シリーズにおけるジョン・スコルジー作品としては第一弾だった『レッドスーツ』は、ドラマを盛り上げるためにガスガス殺されていく脇役が自分が脇役であることを自覚したのちに生き残りをかけていくかなりの変化球な作品だっただけに、作も「どんだけひねってるんだろう」と期待しながら読み始めたのだが、これがわりとストレートな作品だ。 それで良さが消えているというわけでもなく、設定、キャラクタ、セリフ回しとすべてがシンプルにおもしろく実に良い作品に仕上がっている。タイトルに「統合

    ロボット/電脳刑事物の近未来サスペンス──『ロックイン-統合捜査-』 - 基本読書
  • あなたは今、この文章を読んでいる。:パラフィクションの誕生 by 佐々木敦 - 基本読書

    あんまり評論家の人の文章は読まないんだけれども、佐々木敦さんは例外的にちゃんと読んでいる人だと思う。それは何も評論家の書くものはつまらないだとか言っているわけではなくて、ただ個人的に言ってることの意味がよくわからないことが続いたから避けるようになっただけなのだが。もちろん部分部分わかるところもあるし、理屈の通り方とその理論を単独で見た構築物として見たら面白いと思うのだけど、作品を読んだ時の実感と理論の繋がりについていけないというか。理論は面白いけど作品と当につながってるのか……?? 全然わからない……となる。 佐々木敦さんの視点の置き方や文章はそういう意味で言うと、作品にキチンとくっついている安心感がある、というか作品のこういう要素が読者にこういう影響を与えますよね、と「読者に」接した地続きの論を展開しているイメージがある。といっても僕も佐々木敦さんの熱烈なファンというわけではないのでた

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