強い睡魔に襲われていても興味深い新聞記事やテレビ番組を目にするとたちまち目覚めてしまう。このとき脳がどのような仕組みで働いているのかがわかってきた。 脳内に「やる気」や「行動」を起こす部位があることは知られていたが、睡眠を促す中枢が同じ場所で隣接していて、一方が活発になれば、もう一方は抑制されるとみられる。新たな睡眠中枢の発見である。このような睡眠と目覚めを調節する仕組みの謎が解ければ、ストレス社会で一向に解消されない不眠など睡眠障害の根本的な治療にもつながる。 この成果について、睡眠物質の研究で知られる大阪バイオサイエンス研究所の裏出良博部長らが、昨年12月に米科学誌「トレンズ・イン・ニューロサイエンス」に発表したところ、大きな反響を呼んでいる。 この研究はマウスの睡眠中枢を探すことから始まった。睡眠は、アデノシンという物質が特定の受容体に結合することで促される。睡眠中枢にはこの受容体が