ブックマーク / honz.jp (94)

  • 無限大のドルを求めた果てに逮捕された男の転落記──『1兆円を盗んだ男』 - HONZ

    1兆円を盗んだ男 仮想通貨帝国FTXの崩壊 作者: マイケル・ルイス 出版社: 日経BP 日経済新聞出版 発売日: 2024/6/26 この『1兆円を盗んだ男』は、『マネー・ボール』や『最悪の予感』などで知られるマイケル・ルイスの最新作。今回彼がテーマに選んだ人物は暗号資産取引所FTXを立ち上げ莫大な富を築き上げた後、2022年に逮捕されてしまった男サム・バンクマン=フリードだ。 マイケル・ルイスといえば複雑な題材であっても見事な一筋の通ったストーリーに仕立て上げるノンフィクションの名手だ。しかし、書ではさすがにそうもいかなかったらしい。最終的には年間で10億ドルもの利益をあげるようになり、20代で長者番付にも名を連ねた暗号資産の若き天才に幼少期から迫る──というプロローグながら、マイケル・ルイスの取材中にFTXは破産。 その後、サムはFTXの破産と関連した詐欺やマネーロンダリングを

    無限大のドルを求めた果てに逮捕された男の転落記──『1兆円を盗んだ男』 - HONZ
  • 『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 - HONZ

    ロビン・ダンバーは、彼が提唱した「ダンバー数」とともに、その名が広く知られている研究者である。ダンバー数とは、ヒトが安定的に社会的関係を築ける人数のことであり、具体的には約150と見積もられている。ダンバーは、霊長類各種の脳の大きさ(とくに新皮質の大きさ)と集団サイズの間に相関関係があることを見てとり、ヒトの平均的な集団サイズとしてその数をはじき出したのであった。 さて、そんなダンバーが書で新たな課題として取り組むのが、「宗教の起源」である。人類史において、宗教はどのようにして生まれ、どのように拡大を遂げていったのか。宗教に関する広範な知識に加えて、専門の人類学や心理学の知見も駆使しながら、ダンバーはその大きな謎に迫っていく。 ダンバーも言及しているように、現生人類の歴史のなかで、宗教は個人や社会に対していくつかの利益をもたらしてきたと考えられる。その代表的なものを5つ挙げるとすれば、(

    『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 - HONZ
  • 『明治 大正 昭和 化け込み婦人記者奮闘記』化け込み=潜入取材ルポ 型破りな女性記者たちの物語 - HONZ

    2022年度の新聞・通信社における女性記者の割合は男性の4分の1弱である(一般社団法人日新聞協会調べ)。放送業界は多少マシな気もするが、それでもメディアが圧倒的に男性中心であることは変わらない。現代ですらそんな体たらくなのだから、戦前なんて推して知るべし。女性記者(当時は「婦人記者」といった)は各社片手で数えられるほどしかいなかった。 婦人記者という新たな職業が生まれたのは、明治20年代だという。女性読者の増加に伴い、女性向けの記事が求められ、東京や大阪の有力新聞が女性を採用するようになった。 とはいえ、のっけから婦人記者が活躍できたわけではない。女性向けの記事といっても、アイロンのかけ方、シミの抜き方といった家政記事か、政治家や実業家のお宅に赴き、奥様方に普段の生活や子どもの教育法などについてインタビューする名流婦人訪問記などがメインだった。 「号外に 関係のない 婦人記者」と当時の川

    『明治 大正 昭和 化け込み婦人記者奮闘記』化け込み=潜入取材ルポ 型破りな女性記者たちの物語 - HONZ
  • 『眠りつづける少女たち』 集団発生する〈謎の病〉の原因とは - HONZ

    スウェーデンのある地域でのこと。小学校低学年から10代後半までの子どもたちに、〈謎の病〉が発生している。子どもたちは最初、不安になりふさぎ込む。そして徐々に引きこもりはじめ、口数が減っていき、そのうちまったく話さなくなる。最後にはベッドで寝たきりとなり、最悪の場合、べもしなければ目も開かなくなってしまう。そうした子どもたちの数は、2015年から2016年の間だけでも、なんと169人に達している。「あきらめ症候群」と呼ばれるこの病は、では、どうして発生しているのだろうか。 書は、そのような〈謎の病〉の原因を神経科医が追ったものである。扱われているのはあきらめ症候群だけではない。カザフスタンのかつての鉱山町で発生した「眠り病」(第3章)や、キューバ駐在のアメリカ外交官の間で流行した「ハバナ症候群」(第5章)など、8つの章でおもに7つの病がとりあげられている。著者のオサリバンは、関係者へのイ

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  • 『津久井やまゆり園「優生テロ事件」、その深層とその後』異常な犯罪者は異常な社会から生まれる - HONZ

    読むのにとても時間がかかったのは、著者が巨大な問いと格闘しているからかもしれない。戦後最悪ともされる凶悪事件を通して、私たちの社会の奥底で起きている変化をとらえた力作だ。 書は、神奈川県相模原市の障害者施設、津久井やまゆり園で、入所者と職員45名が殺傷された事件の深層に迫ったノンフィクションである。事件そのものを取材したは他にもあるが、書が類書と一線を画すのは、サブタイトルにある「戦争と福祉と優生思想」という視点だ。一見バラバラな3つの言葉は実は深いところでつながっている。それだけではない。著者の人生もまたこの事件と無関係ではなかった。 ノンフィクションのディープな読者は著者の名前に見覚えがあるかもしれない。著者には浅草で起きた短大生殺人事件に関する著作(『自閉症裁判 レッサーパンダ男の罪と罰』)がある。2001年、浅草で19歳の女性が見ず知らずの男に刺し殺されたこの事件は、男がレッ

    『津久井やまゆり園「優生テロ事件」、その深層とその後』異常な犯罪者は異常な社会から生まれる - HONZ
    nenesan0102
    nenesan0102 2023/04/29
    私は子供の頃に知的障害の人に性被害にあった経験があるんだけど、そういう経験があるかないかで事件の受け止め方が違う気がした。性被害に遭った人とかは◯ね!くらい思っててもおかしくないし
  • 『ある行旅死亡人の物語』あなたは誰?身元をたどる渾身のルポルタージュ - HONZ

    「行旅死亡人」とは病気や行き倒れ、自殺等で亡くなった身元不明の死者を表す法律用語である。死亡人は身体的特徴や発見時の状況を官報に公告される。 映画やミステリー小説でも良く登場する”誰かわからない”遺体。その身元を新聞記者が突き止める過程を記したのが『ある行旅死亡人の物語』だ。 共同通信大阪社会部の遊軍記者、武田惇志は記事のネタ探しのため官報に掲載されている「行旅死亡人」のサイトを閲覧していた。そこで目に留まったのが亡くなったときの「所持金ランキング」。一位は尼崎市の自宅アパート玄関先で発見された七十代と思しき女性で、なんと現金で約3500万を持っており、さらに右手の指が全て欠けていたという。すでに火葬され遺骨は尼崎市が保管していた。 発見から一年以上経っていたが、続報は見つからない。市の保健福祉センターに問い合わせると、こんな答えが返ってきた。 「タナカチヅコさんの件ですね」 この人は生前

    『ある行旅死亡人の物語』あなたは誰?身元をたどる渾身のルポルタージュ - HONZ
  • なぜ一見何の利益もない嫌がらせ行為を行う人間が存在するのか?──『悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』 - HONZ

    なぜ一見何の利益もない嫌がらせ行為を行う人間が存在するのか?──『悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』 最近、仕事中のほとんどの時間は何らかのゲーム配信(最近はLeague of Legends)を垂れ流していることが多い。人気のストリーマーは数千、数万といった視聴者を集める。そうすると、一人用ゲームではない対戦系ゲームを配信で行っている配信者は、少なからぬ「嫌がらせ」行為に遭遇するものだ。 たとえば、配信者がゲームのマッチングを開始したのにタイミングを合わせてマッチング開始し、配信者とマッチングしたらその試合で通常ありえないえないゲームプレイをして負けに導いたり、挑発行為を繰り返したり、Apexのようなバトロワなら配信を見て位置を把握し集中攻撃をかけたりが行われるのである。 そうした悪意あるプレイヤーが、なぜ、自分にとってたいして利益があるようにも思えない悪意

    なぜ一見何の利益もない嫌がらせ行為を行う人間が存在するのか?──『悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?』 - HONZ
  • 『語学の天才まで1億光年』超絶面白い語学本! - HONZ

    表紙をみて思わず笑ってしまった。1光年は、光の速さで1年かかる距離だ。1億光年は1億年である。にもかかわらず表紙に描かれた人物は、遥か彼方の目的地にのんきにカヌーで向かおうとしている。 だが笑った後で、はたと気づいた。言語の習得というのは、まさしくカヌーを漕ぐような行為なのではないか。前に進むかどうかは自分次第。しかも目標に到達するまで気の遠くなるような時間がかかる。そう考えると、いたく説得力のある表紙にも見えてくる。 書は、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かないを書く」ことをポリシーに、「辺境ノンフィクション」という独自のジャンルを切り拓いてきた著者による語学体験記である。同時に極めて実用的な言語学習の参考書でもある。語学をめぐる面白すぎるエピソードと、現場でとことん使える実用的知識との融合。あまりにユニーク過ぎてちょっと類書が思い浮かばない。唯一無二の語学

    『語学の天才まで1億光年』超絶面白い語学本! - HONZ
  • 友好的なのが何より大事 『ヒトは〈家畜化〉して進化した──私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 - HONZ

    ヒトの進化において「協力的なコミュニケーション」が大きな鍵を握ったであろうことは、たびたび指摘されるところである。人がひとりでできることは限られている。単独で野生動物を狩ろうとしても、得られるのはせいぜいウサギくらいだろう。しかし、ほかの人と協力すれば、わたしたちはシカだって野牛だって狩ることができる。また、ほかの人と情報交換すれば、わたしたちは新たな技術などについて伝えあうことができる。というように、その進化史において、協力的なコミュニケーションはヒトに多大なメリットをもたらしたと考えられる。 しかしそれならば、次のような問いがさらに生じても不思議ではないだろう。ヒトはどうやって協力的なコミュニケーションを行うことができるようになったのか。 書は、その問いに対してひとつの回答を与えようとするものである。そして、書が導き出す回答は、原書のタイトル(Survival of the Fri

    友好的なのが何より大事 『ヒトは〈家畜化〉して進化した──私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか』 - HONZ
  • 『政治学者、PTA会長になる』これぞ街場の民主主義!政治学者が世間の現実と向き合った1000日の記録 - HONZ

    「その悩み、○○学ではすでに解決しています」みたいなタイトルのを見かけることがある。あなたが日々の仕事で直面する悩みや課題は、すでに最新の学説や理論で解決済みですよ、というわけだ。 だが当にそうだろうか。最新の学説や理論を応用すれば、世の中の問題はたちどころに解決するものだろうか。 著者は政治学を専門とする大学教授である。「話すも涙、聞くも大笑いの人生の諸々の事情」があって、47歳にして人の親となった。小学校のママ友やパパ友のほとんどは干支一回り以上年下だ。そんなママ友からある日「相談があります」と呼び出され、いきなりこんなお願いをされた。 「来年、PTA会長になってくれませんか?」 まさに青天の霹靂だ。驚いた著者は必死に出来ない理由を並べ立てる。「フルタイム・ワーカー」だから無理!「理屈っぽくて、短気で、いたずらにデカいジジイ」だから無理!ところがママ友は決してあきらめず、最後は情に

    『政治学者、PTA会長になる』これぞ街場の民主主義!政治学者が世間の現実と向き合った1000日の記録 - HONZ
  • 『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』は、こわいもの知らずのぶつかり稽古だ! - HONZ

    『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』は、こわいもの知らずのぶつかり稽古だ! 自民党総裁選のニュースが連日報じられている。前回に比べれば、四人が立候補して政策論戦が交わされているのは望ましいことだ。しかし、報道はいつもどおり、政治内容そのものよりも政局に偏っている。政治は何のためにあるのか。それこそが重要問題であるはずなのに、真っ正面から問われることはあまりない。 ライターの和田靜香が、立憲民主党の衆議院議員である小川淳也にそれを問う。ん?誰やねん、その和田靜香と小川淳也って?と思う人がほとんどだろう。失礼ながら、確かに有名とは言いがたい。だからといって、面白くないとは限らない。それどころか、これほど活き活きして、わかりやすく、そして、魂に触れる政治対話はこれまでに読んだことがない。 和田靜香は湯川れい子のアシスタントになったのをきっかけに音楽ライターに

    『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』は、こわいもの知らずのぶつかり稽古だ! - HONZ
    nenesan0102
    nenesan0102 2021/09/28
    自分は障害者だけど、障害者は最低賃金すら保障されなくて時給50円とかだったりするのザラだから、障害者じゃない人だと逆に「障害者じゃないのになんで?」と思う時がある。
  • 歴史の影で忘れ去られていた女性暗号解読者たちの活躍に光を当てるノンフィクション──『コード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たち』 - HONZ

    歴史の影で忘れ去られていた女性暗号解読者たちの活躍に光を当てるノンフィクション──『コード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たち』 近年、ロケットのための計算に明け暮れていた女性たちを描き出したノンフィクション『ロケットガールの誕生』や、ディズニー初期の女性アニメータたちの活躍を取り上げた『アニメーションの女王たち』など、歴史の影で見過ごされてきた女性たちの活躍を取り上げるノンフィクションが増えてきている。今回紹介したい『コード・ガールズ』も、第二次世界大戦中にアメリカ軍に所属し暗号解読に従事した女性たちの活躍を取り上げた、流れに連なる一冊だ。 第二次世界大戦時に暗号解読分野で女性が活躍していたという話は、書を読むまでまったく知らなかったが、実は1945年にはアメリカ陸軍の暗号解読部門1万500人のうち、約7000人、つまり70%ほどが女性だったし、海軍にも4000人もの女性暗号

    歴史の影で忘れ去られていた女性暗号解読者たちの活躍に光を当てるノンフィクション──『コード・ガールズ――日独の暗号を解き明かした女性たち』 - HONZ
  • やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日本中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? - HONZ

    やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? アバウトにしてアナーキー。ざっくりまとめるとこうなるのだろうか。なんだかやたらと凶暴でハードボイルドな室町時代。日人は律儀で柔和などという言い方は絶対に通用しない。室町時代の後半は戦国時代だったから、というわけではない。武士たちだけでなく、農民や女性、僧侶までもがなんだか殺気立っているのだ。まずは『びわ湖無差別殺傷事件』から。 びわ湖がくびれていちばん細くなっているところ、琵琶湖大橋のかかっている西側に堅田という町があった。というか、今もある。そこに兵庫という名の青年がいた。“他の堅田の住人と同じく、周辺を通行する船から通行量をとったり、手広く水運業を行ったり、場合によっては海賊行為を働いたり“ と、とんでもない多角経営を営んでいた。湖なので、海賊ではなくて湖賊だが、まぁ、それはよ

    やたらと人が殺される凶暴な時代『室町は今日もハードボイルド:日本中世のアナーキーな世界』に住んでみたいか? - HONZ
  • 『予測不能の時代』体の動きで心を変える、心の動きで組織を変える - HONZ

    未来は予測不能だ。そんなことは誰でもわかっているし、今ほどこの言葉が実感を伴うときもないだろう。しかし、である。世の中の仕組みの多くは「予測可能」を前提に成り立っているのが実態だ。 例えばルール。過去の経験に基づき作られたルールは、状況が予測不能に変化すると、まったく役に立たなくなる。それどころか、ルールの持つ硬直性が、新たな状況への適応を阻む結果にもつながってしまうのだ。同種のものに、計画、標準化、そして内部統制などがある。 ならば思い切って「未来は予測不能」という前提に立ち、変化の中でも変わらない、普遍的なものに着目してみたらどうなるだろうか? 書は前著『データの見えざる手』でデータを活用し、人間社会のさまざまな法則を明らかにした矢野和男氏が、「予測不能な世界の中で幸せに生きる」というテーマについて綴ったものである。著者は、前提を変えることによって、社会や企業の経営は大きく変えられる

    『予測不能の時代』体の動きで心を変える、心の動きで組織を変える - HONZ
  • 『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること - HONZ

    テーマがテーマだけに、気分が落ち込んでいるときに読むべきではないだろう。しかし、気持ちが落ち着いているときに、自殺というテーマに関する知識を得ておくことは、いつの日かあなた自身やあなたの周りの大切な人を救うことになるかもしれない。そんなワクチンのような役割を果たす一冊である。 著者のジェシー・べリングは、前作『性倒錯者』と同様に、自分自身の実体験をカミングアウトすることから書を始める。自分のセクシュアリティに悩んでいたときのこと、学者として燃え尽き症候群になったときのこと。失業して家の近くの森で自殺の想念にとらわれたときのこと。 そんな主観的なプロローグから話は一気に客観の世界へ飛び、著者は「ヒトはなぜ自殺するのか」というシンプルな問いに、ヒトの心の進化という観点から挑んでいく。 1つ目のアプローチは、自殺を「種」の観点から見るもの。はたして自殺するのは人間だけなのか? もし自殺が人間

    『ヒトはなぜ自殺するのか 死に向かう心の科学』死について考えることと、生について考えること - HONZ
    nenesan0102
    nenesan0102 2021/03/14
    この本は読んでないんだけど、私は自殺は嫌だなーと思っているし、自殺したくないけど、しんどいのもいやだから早く安楽死解禁してほしい。
  • 『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって - HONZ

    にブックカバーはつけない。これを長年の流儀としてきた。 通勤電車でを開くと、目の前に座る人の視線がきまって表紙に注がれる。との出会いは何がきっかけになるかわからない。中には電車でたまたま見かけて興味を持ち、を買う人だっているかもしれない。出版文化への貢献のためなら、喜んで歩く広告塔になろう。そう考えて、どんなであろうと(たとえ『性豪』や『鍵開けマニュアル』といっただろうと)顔色ひとつ変えず公衆の面前でを開いてきた。それがハードボイルドな俺の流儀だった。 だが、書を手にした時、初めてその覚悟が揺らいだ。 いや、覚悟が揺らぐなんてちょっとカッコつけ過ぎである。正直に言おう。気後れしてしまったのだ。臆病な犬のように尻尾を股の間に挟んで後ずさりしてしまったのだ。カバンに手を突っ込んだまま固まっている俺を、目の前の女が不安そうに見上げた。銃を持っているとでも思われたのかもしれない。怯

    『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって - HONZ
  • 色覚サイエンスの最先端を知ると、「日本」まで見えてくる――『「色のふしぎ」と不思議な社会』  - HONZ

    「この赤はリンゴの赤だね」と言うとき、どんな赤色を見ているかは、実は人それぞれだ。そもそもヒトがどんな色を視ているかを科学的に考えたことがあまりない。ところがその色覚について、「正常」と「異常」に線引きする時代もあった――それなら色覚とはいったいどういうものなんだ? 猛然と、最先端のサイエンスの知見に挑む著者による、新たな色覚原論の決定版! 著者の川端裕人さんと言えば、最近では『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』や『科学の最前線を切りひらく!』など、サイエンスの現場の話を平易に伝えてくれるノンフィクション作家だ。と同時に小説も数多く手がけているほどで、読みやすい文章でこちらの守備範囲を広げてくれる。 1964年生まれ、学校健診の色覚検査で「色覚異常」とされた、当事者である川端さんが5年以上地道に調べて書き上げたのが、色覚をめぐる社会情勢と歴史、そして、2021年の科学

    色覚サイエンスの最先端を知ると、「日本」まで見えてくる――『「色のふしぎ」と不思議な社会』  - HONZ
  • 『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ

    同性愛の「治療」を受ける男。娼婦を相手に性的興奮を得ることができれば成功だ。男の頭には電極が差し込まれており、後頭部から4のコードが隣の部屋まで延びている。その部屋では、研究者たちが電極から送られてくる計測値を見ながら、男の快楽中枢に適切な電気刺激を与える。 まるでSFだ。しかし、未来の話としてはおかしいと思われないだろうか。現在の状況を考えると、LGBTが治療対象となる未来などやってくるはずがなかろう。未来物語でもなければ架空のストーリーでもない。米国で実際におこなわれた人体実験なのである。 書『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』の冒頭シーンがこれだ。いったいどんな内容のなのか。意識せずとも期待感が広がっていく。まるで脳のどこかに電気刺激が与えられたかのように。 この実験をおこなったのは、精神科医ロバート・ガルブレイス・ヒース。統合失調症病などさまざまな精神疾患に対して、患者

    『闇の脳科学「完全な人間」をつくる』 その先駆者の栄光と悲劇、そして「脳操作」の現在と未来 - HONZ
    nenesan0102
    nenesan0102 2020/10/14
    うちの兄もひどい統失だったんだけど、電気ショック療法をやったらまるで別人のように回復したんだよね。社会復帰するまではいかないからまだ入院したままだけど。発達障害とかが治れば奇跡的だよね。
  • 世界の食文化史がひっくり返る大発見!『幻のアフリカ納豆を追え!―そして現れた<サピエンス納豆>』 - HONZ

    “日以外でも納豆がべられていたの?納豆にこんなにすごい背景があるなんて!”と衝撃を与えた『謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日納豆〉』から4年。前作で解き明かしきれなかった異国の納豆の正体を、完全に明らかにした驚天動地のノンフィクションがいよいよ発売された。 発売直前のある日、新潮社の会議室を高野秀行さんは一日ジャックしていた。リモートを含め取材が5。新型コロナ禍で酷暑のなかでも注目度は相変わらず高い。そしてご人のテンションもアゲアゲである。すばらしき納豆の世界へようこそ! ー『幻のアフリカ納豆を追え!』出版おめでとうごさいます。それにしても日、朝鮮半島、東南アジア、びょーんと飛んで西アフリカで同じ発酵品がべられているのは面白いですね。なんでなんでしょう? 高野 :それを解き明かしたくて、このを書いたんですけどねw 日人だけがうま味を感じているわけじゃないってことですよ

    世界の食文化史がひっくり返る大発見!『幻のアフリカ納豆を追え!―そして現れた<サピエンス納豆>』 - HONZ
  • なんたるガッツ!『明治を生きた男装の女医』がスゴすぎる - HONZ

    高橋瑞(たかはし みず)、嘉永5年(1852年)生まれ。その名を知っている人はどれくらいいるだろう。日で三番目に医師国家資格を取得した女性である。『明治を生きた男装の女医』は、その人生を丹念に綴った伝記小説だ。 24歳にして家出、旅芸人の賄い、女中、短く不幸な結婚の後、産婆に弟子入りする。28歳の時、跡継ぎになれと誘われるが、女医になりたいと固辞する。しかし、女性にはその資格がないことを知り、まず内務省へ直接請願に行く。すごい行動力だ。ちなみに、取り上げた赤ん坊は2万人という。 済世学舎への入学を希望するが、女子学生を受け入れたことがないために難色を示される。粘り勝ちするも、「女医は不可」、「乞」、「行かず後家」などと黒板に書かれるなど、下劣な嫌がらせをうけ続ける。 そんなことはものともせず、無事に修了し、順天堂医院で実習をすませ、34歳にして医師となる。荻野吟子、生沢久野に次ぐ、日

    なんたるガッツ!『明治を生きた男装の女医』がスゴすぎる - HONZ