「どう生きるか」という問いは、人類の歴史上、幾度となく繰り返されてきたものでしょう。しかし今ほどこの問いが、切実になったことはないのではないでしょうか。暮らしの基盤たる共同体が解体し、宗教もかつての力を失った現代、多くの人びとが何の支えもないまま、競争と自己責任の日々を余儀なくされています。私たちはいったい何を間違えてしまったのでしょうか。そして、本当に生きるとはどういうことなのでしょうか。ゲノムを基本に生きものの歴史と関係を読み解く「生命誌」の創出者、中村桂子先生にお聞きしました。 ――この社会の問題というのはいくつもあると思うんですけど、そのうちの一つに、多くの人が、どのように生きるかを見失っているということがあるように思うんです。インターネットやらAIやらで世の中はたしかにどんどん便利になっているけど、本当にそれだけでいいのかなって思う人が――私自身も含めて――最近やっと増えてきたよ