クリープハイプのヴォーカル&ギターの尾崎世界観さんは、2016年『祐介』で作家デビューされました。 作家として大きな影響を受けたのが、10代の頃から読んでいた花村萬月さんの小説だといいます。 「花村さんとお話をしてみたい」という尾崎さんの希望で、本対談が実現しました。 飾らない言葉で語るうちに、話題はどんどん深い方向へ。 暴力のこと、セックスのこと、絶望のこと、そして何より小説という大いなる虚構を作るということ——。 ◇引き算の描写 花村 『祐介』読んだ。ほんとに初めて書いた小説なの? 尾崎 はい、そうです。原稿用紙2枚分ぐらいのちょっとした文章は書いていたんですけど、長いのは初めてでした。 花村 いや、正直、驚いた。ちょっとなめてたな。俺も意地が悪いから、最初読むときは文学界新人賞の選考みたいな調子で読んでくわけよ。確かに、はじめは新人賞に応募してくる原稿に近いにおいを感じたけどね。ただ