月に一度の通院。ドアは開けっ放しで、なぜかわからないがかなり室温が暑く設定されていた。待合の椅子も間隔が空けられ、「三密を避けるために外でお待ちを希望の場合はお申し付け下さい」と貼り紙。受付にはもちろんビニールシート。 名前を呼ばれて診察室に入ってみると、入り口のすぐそこに患者用の椅子。医師ははるか遠く。 「ほら、コロナ対策ですよ」 そりゃそうだ。しかし、なんか会話をするには不自然な位置と距離で、なにかおかしくなってしまった。黒マスクの下でずっとにやついていたと思う。だいたい、もとからここは診察室のドアが薄いから、会話の声が外に漏れるんだ。大声で話さなきゃいけねえから、さらに聞こえちゃうぜ。 「で、どうですか」 「毎年四月は暇なんですが、今年は輪をかけて暇です」 「なにか心理的に影響したりしてますか」 「世界中ひどい状態なので、かえって気が楽なくらいです」 おれはにやつきながらひどいことを