5-(7) しかし、その「引用」──「ある空漠たる恐怖に捕えられ」── の前に佐藤優。彼の最近の発言(二〇〇九年十月刊)から。 亀山郁夫氏の訳は、従来の訳に較べ、格段と正確でかつ読みやすい。実は神を信じていないドストエフスキーの本心が透けて見える。ドストエフスキーの小説が流行するような社会は「病んでいる」と評者は考える。 (「佐藤優選・書斎の本棚から百冊」 立花隆・佐藤優『ぼくらの頭脳の鍛え方』 文春新書) 以前にも同じ文春新書(二〇〇八年四月刊)でこういっていました。 佐藤 そして、今回、実に見事な形で戻ってこられた。『カラマーゾフの兄弟』の新訳(光文社古典新訳文庫)は実にすばらしい。もともと亀山先生の翻訳は、ドストエフスキー以外についても正確で読みやすいという定評があります。ただし、ドストエフスキーの作品、特に『カラマーゾフの兄弟』については、他の翻訳とは違った「重圧感」が訳者にとって